県の工事監督業務は何に時間がかかる?滋賀県職員の1,896時間の記録から見る課題

公共工事では、工事を受注する会社だけでなく、発注する役所の側でも人手不足が進んでいます。
滋賀県の土木事務所の職員による、近畿地方整備局の研究発表会(2025年度)では、県の工事監督業務の実態が明らかになりました。
県の土木職員は、具体的にどの仕事に何時間使っているのでしょうか?
そこで本記事では、以下の3テーマを解説します。
- 県の工事監督業務の範囲
- 職員が減り続ける背景
- 年間1,896時間の業務の内訳
驚くことに県の工事監督業務は、積算・改算と工事関係資料の作成だけで6割を超えています。
つまり、ここをどう効率化するかが課題です。
県の土木職員の働き方や、発注者支援業務に関心がある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
県の工事監督業務は積算までを担う

県の工事監督業務とは、どこまでの仕事を指すのでしょうか?
同じ「工事監督業務」でも、国土交通省・NEXCO・県では、担当する仕事の範囲が異なります。
国土交通省の工事監督業務は監督が中心で、積算は担当しません。
一方、県の工事監督業務には、監督に加えて積算も含まれます。
滋賀県に限らず、自治体の多くが同じ形です。
「工事監督業務における生成AIの活用検討について」の発表では、工事監督業務を次のように定義しました。
本報告で対象とする工事監督業務とは、土木事務所で技術系職員が執行する業務のうち、工事に関するもの(委託業務を除く)と定義する
工事に関わる仕事を広く含むため、監督だけでなく積算もこの範囲に入るわけです。
県の工事監督業務を担う職員は減り続けている

県の工事監督業務を担う職員は、厳しい状況にあります。
滋賀県の技術職の採用試験では、競争倍率が平成26年(2014年)の4.1倍から、令和5年(2023年)には2.4倍まで下がりました。
さらに、30代までの退職者は約3.6倍に増えています。
たとえば10年前に年10人だった退職者が、今は36人になっている計算です。
発表では、今後の見通しを次のように述べています。
今後労働人口が減少する中で、さらに土木技術職員の確保が困難になることは想像に難くない。以上より、県土木行政は、多様化する社会ニーズと増大する維持管理に対して、さらに少数の職員で立ち向かう必要があり、これまでの業務効率化の枠を超え、抜本的な業務の見直しと再構築が求められる
コンプライアンスへの対応や住民からの要望も加わり、人が減るのに仕事は増えています。
その解決策として進められているのが、生成AIの活用です。
県の工事監督業務の約4割は積算・改算

この職員は、どの業務に時間がかかっているかを明らかにするため、1年間の業務1,896時間を、毎日30分単位で記録しました。
1日8時間・週5日で働くと週40時間で、52週では2,080時間になります。
つまり、勤務時間の大半を記録したことになります。

記録した業務を10項目に分けた結果は、以下のとおりです。
| 業務 | 割合 |
|---|---|
| 積算・改算 | 38% |
| 工事関係資料作成 | 25% |
| 工事立会・協議 | 11% |
| 地元・関係者協議 | 7% |
| 内部協議 | 6% |
| 工事管理システム | 5% |
| メール処理 | 3% |
| 検査 | 2% |
| 研修等 | 2% |
| スケジュール調整 | 1% |
最も多いのは積算・改算の38%で、工事関係資料作成の25%と合わせると6割を超えます。
工事関係資料作成とは、たとえば掘削中に想定外の埋設物が出たときなどに、受注者と協議し、資料や写真を出してもらうやり取りです。
工事管理システムは、ASPを使った書類の提出や受け取りを指します。
この発表会資料は滋賀県の内容であるものの、おおよそどの県でも同程度の割合でしょう。
県の工事監督業務でAI活用を進める4業務

では、10項目のうち、どの業務を改善の対象にしたのでしょうか?
3番目に多い工事立会・協議(11%)は、現場技術員の活用やWeb立会などで、すでに大幅に効率化されています。
内部協議(6%)も、不要な会議を減らしてきたため、改善の余地が少ないと判断されました。
そこで、残る以下の4業務が対象になりました。
- 積算・改算
- 工事関係資料作成
- 地元・関係者協議
- 工事管理システム
この4業務で、年間の業務時間の75%を占めます。
工事立会・協議の効率化を支えた現場技術員は、発注者支援業務のスタッフです。
立会や現場の確認を任せられる人がいるので、県の職員は積算や資料作成など、自分にしかできない業務に時間を回せます。
発注者支援業務は、少ない職員で回す県の工事監督業務を支える役割を担っているといえます。
まとめ:県の工事監督業務の効率化は、積算・改算と資料作成が鍵
県の工事監督業務は監督だけでなく積算まで担い、積算・改算と工事関係資料の作成だけで業務時間の6割を超えます。
一方、採用倍率の低下と若手・中堅の退職で、職員は減り続けています。
立会や内部協議の効率化はすでに進んでいます。
そのため、今後はAIを使って残りの4業務をどこまで減らせるかが焦点になりそうです。
4業務に具体的にどうAIを使ったのかは、次の動画で紹介予定です。
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この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。








