【発注者支援業務】年間の工事件数は?主な発注者や勤務場所を解説!
発注者支援業務は具体的にどんな場所で働いているのでしょうか?
実は”発注者”によって、勤務地には大きな特徴があります。
今回は発注者支援業務が働く場所や仕事内容について具体的にイメージしてもらうために、以下の内容を解説します。
- 発注者支援業務の主な”発注者”とは?
- 年間に何件の工事が発注されるのか?
- 国が発注する工事内容
国土交通省の資料をもとに解説します!
目次
1. 発注者支援業務の主な発注者
発注者支援業務の仕事場所を知る前に、まずはどんな”発注者”がいるのか知っておきましょう。
発注者は大きく4つに分けられます。
- 国
- 特殊法人
- 地方公共団体
- 地方公社
発注者支援業務のボリュームとしては国土交通省が最も大きいです。
その中でも代表的な仕事が”工事監督支援業務”です。
特殊法人とは
特殊法人とは、国家的、公共的な特殊事業を行うために特別の法律によって設置される法人のことです。
(例)日本赤十字社・日本放送協会(NHK)・日本中央競馬会など
地方公共団体とは
地方公共団体とは、都道府県や市区町村など一定の地域において、行政を行うために国から与えられた自治権を行使して統括を行う各行政機関のことです。
(例)区役所・町役場・東京都庁など
地方公社とは
地方公共団体が公共的な事業を行う目的で財政援助をして設立する法人のことです。
事業内容としては、公共用地の買収・造成、農地開発、有料道路経営などがあります。
(例)地方住宅供給公社・地方道路公社・土地開発公社など
工事監督業務とは
工事監督支援業務とは、発注者と受注者(施工者)の間に入り、工事の着工から引き渡しまで、全工程にわたって円滑な履行ができるよう支援する業務です。
主な業務としては、次のようなものがあります。
- 契約図書の内容の把握
- 施工計画書の受理
- 指定材料の確認
- 工事施工の立会
- 段階確認
- 施工体制の把握
- 工事施工状況の把握
- 改造請求書等に関する資料の提出
- 支給材料および貸与品の確認
- 関連工事との調整
- 地元対応
- 関係機関との協議・調整
- 事故などに対する処置
- 契約変更にかかる対応・報告
- 完成検査
基本的には工事が施工計画・図面通りに進められているかを確認することがメインとなります。
そのため、変更などが起こった際は速やかに対応することも必要とされます。
2. 国土交通省の年間工事発注件数
発注者支援業務の仕事のボリューム感を知るために、国土交通省から発注される”年間の工事発注件数”を紹介します。
国土交通省の資料を見ると、まず出てくるのが“港湾・空港・営繕”関係を除く”という表現です。
先にこちらの用語を説明しておくと、そもそも国土交通省とは、昔の”建設省”と”運輸省”が合体してできたところです。
ここで言う”港湾・空港”とは、後者の旧運輸省系の工事を意味します。
そして“営繕”は建築系の工事のことです。
この2種類の工事を除くということなので、下記の工事発注件数データは旧建設省系の工事(例:国道の工事・一級河川の工事)のみを対象としたものだと思ってください。
- 平成29年…8,317件
- 平成30年…8,020件
- 令和元年…9,168件
旧建設省系の工事だけで約9,000件なので、先ほどの運輸省系の工事や、営繕工事を含めれば1万件近くなるはずです。
年間にこれだけの数の工事が発注され、それを全部検査・管理しなくてはいけないとなると、役所の職員だけでは処理しきれません。
だからこそ発注者支援業務が存在するということですね。
建設省と運輸省について
建設省と運輸省は、どちらも2001年まで存在していた旧省庁のことです。
建設省は国土開発や地方計画の河川・道路・上下水道などの公共事業、住宅・土地政策、都市計画、建設産業の指導・監督などに関する行政事務を担当していました。
一方、運輸省は水・陸・海・空にわたる交通・運輸に関わる行政から、外局である気象庁によって行われる気象業務や、海上保安庁によって行われる海上の安全および治安の維持に至るまで幅広く担当していました。
3. 国の主な3つの発注者
発注者は大きく分けると①国、②特殊法人、③地方公共団体、④地方公社の4つと言いましたが、本記事では”国”にクローズアップして、具体的な勤務地や仕事内容を解説します。
“国”で工事を発注する主な省庁は次の3つです。
- 国土交通省
- 農林水産省
- 防衛省
それでは順に説明します。
国土交通省の主な工事内容
国土交通省が発注する工事内容は主に次の7つに分けられます。
- 道路
- 河川
- 砂防
- ダム
- 公園
- 営繕
- 港湾・空港
ちなみに、こちらの順番は仕事のボリューム順ではありません。
道路
いわゆる国道といわれる道路です。
河川
国土交通省では一級河川と言われる川の工事を取り扱います。
一級河川は、関東でいうと利根川や江戸川などですね。
一級河川とは、国土保全上または国民経済上で特に重要な水系のうち、国土交通大臣が指定した河川のことです。
生活や経済へ深く関わるため、河川法によって管理されており、その数は約14,000本と言われています。
一級河川の指定を受けているのは次のような河川です。
<北海道地方>
石狩川、釧路川
<東北地方>
高瀬川、最上川
<関東地方>
荒川、鬼怒川
<中部地方>
信濃川、黒部川
<近畿地方>
大和川、琵琶湖
<中国地方>
天神川、高津川
<四国地方>
吉野川、四万十川
<九州地方>
筑後川、大分川
砂防
砂防とは、土石流や土砂を防ぐためのものです。
日本は国土面積の7割を山地が占める上、山に囲まれた谷地やその下流で開けた扇状地、火山周辺の台地を生活や産業活動場所としているため、このような場所を守るための”砂防”とう技術が非常に発展しています。
世界でも”sabo”という言葉がそのまま通用するくらいです。
山の中で小さいダムみたいなものを見たことはありませんか?
あれは砂防ダムや砂防堰堤(さぼうえんてい)と呼ばれています。
【砂防ダム・砂防堰堤(さぼうえんてい)について】
堰堤とは砂防や貯水、治水のために河川・渓谷を横断して作られる堤防のことです。
砂防法に基づき国土交通省が管轄し、各地の地方整備局や都道府県の土木系の部署が建設します。
現在は”ダム”と呼ばれる方が多く、つまり砂防ダムと砂防堰堤は同じものを指します。
土砂は常に川の中で水と一緒に流れているものですが、大雨や洪水時は一気に大量の土石流が発生するため、これを止めることが重要となります。
砂防堰堤の根本的な機能はこれらの土石流をせき止め、有害な土砂を貯めることです。
主な堰堤としては、土砂を完全に防ぐ”不透過型砂防堰堤”と、有害な土石流の捕捉や減勢をねらいとした”透過型砂防堰堤”の2種類があります。
前者で最も一般的なものは”コンクリート堰堤”で、開口部を持たないため、土砂をしっかりとせき止めます。
堰堤上部に貯まった土砂や流木は、適切なタイミングで取り除かれます。
後者には”コンクリートスリット堰堤や””鋼製スリット堰堤”などがあり、いずれもスリット(開口部)があることが特徴です。
スリットのおかげで、通常時は無害な土砂を下流に流すことができるため、完全に流れを遮る”不透過砂防堰堤”より環境に優しいと言われています。
ちなみに、治山堰堤(治山ダム)というものがありますが、こちらは森林法に基づき林野庁が管轄し、各地の森林管理署や都道府県の林業系の部署が建設するものです。
砂防堤防と管轄や建設する部署が異なる他、そもそも堰堤を築く目的も異なるので、メンテナンス上の考え方にも違いがあります。
ダム
国土交通省で新しいダムを作ることはなかなかないのですが、完成したダムの管理といった仕事があります。
公園
発注のボリューム感で比べると少ないのですが、公園の整備といった仕事があります。
国で管理している公園の例としては、関東で言うと”昭和記念公園”などですね。
営繕
前述した建築系の仕事ですね。
国土交通省の官舎の建設や、完成後の保守メンテナンスなどが含まれます。
港湾・空港
それからもう一つがさっき言った”港湾・空港”です。
名前の通り、港場や空港に関わる工事が対象になります。
発注者支援業務は異なるジャンルの工事にも関わるのか?
上記7つのように幅拾い工事のジャンルがあるとわかると「発注者支援業務で河川工事に携わったとして、次に道路やダムに関わる機会もあるのかな?」と思う人もいるでしょう。
結論から言うと”イエス”です。
ただし1つの業務には1年~3年程度の契約期間があるため、その間は同じ業務に従事することがほとんどです。
河川の契約期間終了後に、道路やダムなど異なるジャンルの工事を担当することはあるので、発注支援業務経験者に実績を聞くと「私は河川6年、ダム4年です」といった答えが返ってきたりします。
農林水産省の主な工事内容
次に、農林水産省ではどんな工事があるのか説明します。
農林水産省は”農(業)・林(業)・水産(業)”を取り扱う省庁ですが、工事として最も多いのは農業の分野です。
わかりやすい例をあげると、”農道を作る”や”用水路を作る”などです。
農林水産省の工事は大きく分けて次の3種類があります。
- 農道
- 圃場整備
- 溜め池
それでは順に説明します。
農道
農道とはつまり”農業従事者のための道路”のことです。
一般の車も通れるため、一見他の道路との違いがわからないのですが、農道は本来農林水産省が作った農業者のための道路です。
この理屈で言うと”林道”はつまり農林水産省が作った林業従事者の人のための道路ですね。
道路というと昔は、国道や県道が既にあるのに「田んぼもあるから」と農道も作ってしまい、非常に無駄だという話がありました。
縦割り行政の典型的弊害だ”と言われていましたが、今はこのような問題も落ち着いてきたと思います。
圃場整備
それから代表的なものでは”圃場整備(ほじょうせいび)”があります。
田んぼや畑を整備することで、要するに”区画整理”のことですね。
区画整理とは、土地・区画がバラバラだったり、道も曲がりくねったりして利便性が悪い場所を綺麗にすることです。
この区画整理の農業版が”圃場整備”です。
田畑の形がバラバラだったところを効率よく農業できるよう整備するのですね。
区画整理がなされていない無計画な土地では、次のような問題発生の可能性が高まります。
- 災害時に消防車や救急車が入れない
- 歩行者が危険にさらされる
- 事故が発生しやすい
- 雨が降るとすぐに浸水被害が発生する
- 不衛生
区画整理を行うと、見通しのいい広い道路や公園・広場などの公共施設が確保できるため、安全で充実した暮らしを送れる土地に生まれ変わります。
また住みやすくなることで、土地の利用価値が上がるというメリットもあります。
溜め池
あとは溜め池の工事などもあります。
溜め池というと、一般的には農業用水を溜める場所のことです。
小規模のダムというイメージですが、コンクリートの構造物ではなく、土を盛って池を作る感じですね。
全体的なイメージとして、『古くなったモノを改修する工事』は農林水産省の仕事です。
国土交通省と比較すると、農林水産省も次に紹介する防衛省も、仕事のボリューム感や予算感はやはり少ないですね。
防衛省の主な工事内容
防衛省というと”基地”をイメージされる方も多いかと思いますが、工事の作業も基地の中で行うことが圧倒的に多いです。
具体的には、”基地内の滑走路の整備をする”、”基地内の官舎・宿舎の整備”、”格納庫などの整備”があげられます。
基地内での作業なので、セキュリティ面が細かい点は防衛省の特徴の1つです。
まとめ
最後に本記事の内容をまとめます。
発注者支援業務の発注者は主に次の4つです。
- 国
- 特殊法人
- 地方公共団体
- 地方公社
この中で”国”の発注者を分けると、主に3つの省庁になります。
- 国土交通省
- 農林水産省
- 防衛省
この中で最も仕事の発注件数が多いのが”国土交通省”です。
各省庁の主な工事内容は次の通りです。
国土交通省
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農林水産省
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防衛省
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工事内容
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