発注者支援業務の受注金額はどうやって決まる?最近の単価も公開!

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発注者支援業務の単価は、設計業務委託等技術者単価によって算出されています。

設計業務委託等技術者単価とは、平たく言うと、国土交通省などのお役所が発注者支援業務を依頼する際の積算のベースとなる単価です。

つまりこの単価を見れば、発注者支援業務の平均給与額がどのように推移しているかを掴むことができます。

今回は発注者支援業務の受注金額がどのように算出されているのか、また、ここ10年の動向について詳しく解説します!

公共工事設計労務単価とは

そもそも役所が公共工事を発注する際には、工事費用(予定価格)を、機(き)・労(ろう)・材(ざい)を基に積算します。

機(き)・労(ろう)・材(ざい)とは

機…クレーン・バックホウなどの機械経費

労…職人に仕事をしてもらうための労務費

材…1㎡あたりのコンクリート費はいくらか?といった材料費

この労務費のベースとなるのが、公共工事設計労務単価です。

公共工事設計労務単価とは、施工を行う職人の単価を指します。

たとえば、道路工事でコンクリートを打設する場合には型枠大工が必要です。

その型枠大工を依頼する際の費用は、1日の単価×所要日数で計算するのですが、人によって積算にバラつきが出てはいけません。

よって、国土交通省では工種(型枠1㎡)と地域(Aエリア)に応じて、公共工事設計労務単価が決定されています。

その改訂は年に1回行われており、令和4年度の単価は2021年の2月18日に決定されました。

まとめると、公共工事設計労務単価は職人の単価、設計業務委託等技術者単価は発注者支援業務の単価ということです。

型枠大工とは

鉄筋コンクリートの建物を建造する際は、次のような工程があります。

  • 骨格部分として、鉄筋や鉄骨を組み合わせる
  • 出来上がった骨格を囲うようにして型枠を作る
  • 型枠に生コンクリートを流し込む(体躯の完成)

型枠大工とは、この工程を担う技術者のことです。

いわば建造物の土台となる基礎を担当するので、非常に重要なポジションです。

また、コンクリートは流し込んでいるうちにどんどん硬化していくので、打設は入念な準備と時間管理が必要とされます。

バックホウとは

“油圧ショベル”と総称される重機の1つで、back(後ろ側)+hoe(くわ)が語源となってます。

ショベルが運転者側の方向に取り付けられているのが特徴です。

内側(自分側)に引き寄せるように操作するので、地面より低い地点での掘削作業に最適です。

逆にショベルが進行方向側を向いている重機は、パワーショベルと呼ばれています。

工種とは

工種とは、工事種別の略称で、工事の種類のことです。

次の16工種において体系ツリーが整備されており、工種・費目・種別・細別・規格・積算単位などが一目でわかるようになっています。

  • ほ場整備工事
  • PC橋工事
  • 農地造成工事
  • 橋梁下部工事
  • 農道工事
  • 機場下部工事
  • 水路トンネル工事
  • 地すべり防止工事
  • 水路工事
  • 海岸工事
  • 河川及び排水路工事
  • コンクリート補修工事
  • 管水路工事
  • 畑かん施設工事
  • その他土木(1)工事
  • その他土木(2)工事

アスファルトの舗装工事の場合だと、次のように表記されています。

工種A 工種B 種別 細別 材料種別・規格 積算単位
河川及び排水路工事 道路復旧工 アスファルト舗装工 下層路盤

情操路盤

基層

表層

 

 

発注者支援業務の費用構成

国土交通省が発注者支援業務を2,000万円で発注するとしたら、この2,000万とはどのように算出されるのでしょうか?

工事の費用は機(き)・労(ろう)・材(ざい)を基に積算されると述べました。

一方、発注者支援業務の費用はほとんどが人件費で構成されます。

よって、おおまかにいうと1日の単価×20日+残業費+経費で発注者支援業務の費用が求められます。

この際、単価のベースとなるのが設計業務委託等技術者単価です。

こちらの設計業務委託等技術者単価も、年度末の2月頃に毎年発表されています。

設計業務委託等技術者単価の詳細

設計業務委託等技術者単価は国土交通省であれば、次のように定義づけられています。

国土交通省が発注する公共工事の設計業務委託の積算に用いるための単価

設計業務委託とはつまり、道路・堤防・橋などの設計を担うコンサルタント業務や測量業務のことです。

こういった業務を依頼する際の積算に用いるのが、設計業務委託等技術者単価ということですね。

また、設計業務委託等技術者単価がどのように求められているかについては、次の一文があります。

毎年度実施している給与実態調査に基づいて、20職種の単価を設定している

つまり、建設コンサルタントや測量業務を行う会社に毎年、給与実態の調査をし、その結果から職種ごとに平均を割り出して、単価を設定しているということです。

設計業務委託等技術者単価についての詳細

設計業務委託等技術者単価は、次の4つの項目から構成されます。

  1. 基本給相当額
  2. 諸手当(役職・資格・通勤・住宅・その他)
  3. 賞与相当額
  4. 事業主負担額(退職金積立・健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険・児童手当)

※すべて、所定労働時間内8時間当たりの金額とする

なお、時間外、休日及び深夜労働についての割増賃金や、通常の作業条件または作業内容を超えた労働に対する手当は対象外となります。

単価が設定されている20職種の内訳は次の通りです。

①設計業務

  • 主任技術者
  • 理事、技師長
  • 主任技師
  • 技師(A)
  • 技師(B)
  • 技師(C)
  • 技術員

②測量業務

  • 測量主任技師
  • 測量技師
  • 測量技師補
  • 測量助手
  • 測量補助員

③航空・船舶関係

  • 操縦士
  • 整備士
  • 撮影士
  • 撮影助手
  • 測量船操縦士

④地質業務

  • 地質調査技師
  • 主任地質調査員
  • 地質調査員

令和4年度の設計業務委託等技術者単価

令和4年度の設計業務委託等技術者単価資料がこちらです。

なお、こちらは国土交通省の資料ですが、どの機関もこちらの発表を基に単価を決定するので、この資料がすべてのベースになると考えていいでしょう。

グラフを見ると、平成16年~24年までは低迷していますが、そこからどんどん上がってきているのがわかります。

最上部に書いてある通り、令和4年度は前年比3.2%増になり、全職種平均が42,195円となっています。

なお、ここ10年間の前年度比率をまとめると次のようになります。

年度 前年度比率
平成25年度 +1.2%
平成26年度 +3.2%
平成27年度 +4.7%
平成28年度 +3.8%
平成29年度 +3.1%
平成30年度 +3.0%
令和1年度 +3.7%
令和2年度 +3.1%
令和3年度 +1.6%
令和4年度 +3.2%

平均すると約3%は年々単価が上がっています。

これはつまり、民間の建設コンサルタントや測量業務を行う会社の給料が上がっているということです。

発注者支援業務の単価が上昇している理由3つ

なぜここ10年の間、発注者支援業務の単価は上がり続けているのでしょうか?

理由としては、次の3つの要因が考えられます。

  1. 民主党政権から自民党政権に変わったから
  2. 東日本大震災があったから
  3. 人手不足だから

順に説明します。

理由1: 民主党政権から自民党政権に変わったから

10年前の平成21年~24年は政権与党が民主党でした。

民主党はどちらかというと公共事業に消極的な党です。

よって、平成24年までの発注者支援業務の単価の低迷には、自民党政権の影響があったと言えるでしょう。

その後、平成24年から政権与党が自民党になり、安倍前首相が”国土強靱化計画”を実施。

この流れを受けて公共工事が盛り上がりを見せるようになり、発注者支援業務の単価も上昇に転じました。

公共事業悪玉論を展開していた民主党

2009年度に民主党がマニフェストとして掲げた政策が”コンクリートから人へ”でした。

これは自民党政権が公共工事(コンクリート)に多額の税金を使用していたことを無駄遣いとして批判し、子育てや医療、年金、雇用など、人への予算を充実すべきだと主張したものです。

結果、公共事業は激減し、人離れが加速しました。

自民党が復権してなおそのダメージは根深く、今の人手不足の一因にもなっていると言えます。

国土強靱化計画とは

国土強靱化計画とは、東日本大震災を受けて施工された国土強靭化基本法に基づき、災害に強い国づくりを行うための施策を盛り込んだ計画のことです。

インフラ事業における防災、減災の課題点を5年ごとに洗い出し、関係省庁や各地方自治体の防災対策に反映されています。

理由2: 東日本大震災があったから

平成23年には東日本大震災が起きました。

グラフが平成24年度を底に上昇に転じているのは、震災復旧工事の影響が大きいと言えます。

理由3: 人手不足だから

平成16年~23年までは建設業界が不況だったため、建設業から離れてしまう人が多くいました。

さらに高齢化の深刻化により、人手不足問題が加速することになりました。

つまり、仕事量は増えたものの、人手が減少しているために、単価がより上昇しているということです。

 

まとめると、発注者支援業務の単価の上昇要因には民主党から自民党への政権交代、および国土強靱化計画の実施を経て、公共工事の数が増加したことがあげられます。

同時に、人手不足によって有効求人倍率が上がっているため、それにともなって単価がより高くなっていると言えるでしょう。

発注者支援業務の単価と給与の仕組み

発注者支援業務の単価が上がっているということは、落札価格も上がっているということです。

発注者支援業務は、工事の予定価格に対して80%くらいの落札率で落札します。

予定価格とは、あらゆるコストを考慮し、積算した上で設定される落札基準価格のことです。

この予定価格に対する実際の落札金額の割合を、落札率といいます。

つまり1億円の予定金額であれば8,000万円で落札するのですが、この1億円という数字は、10年前であれば約7,000万円程度だったと予測されます。

よって、従来より高い値段で落札をしている分、会社で働く発注者支援業務の技術者達の給料にも反映されているというのが現状です。

発注者支援業務の単価が今後も永遠に上がり調子なのかはわかりません。

しかし、日本の人手不足は間違いなく進行するので、当分の間、この上昇傾向は続くでしょう。

発注者支援業務の単価に地域差はないの?

地域差はあります。

しかし今回の資料は全職種の平均なので、全地域、全職種で見てもなお、年3%ほど上昇していると言えます。

まとめ

今回は発注者支援業務の受注金額をテーマに、工事費用および発注者支援業務の単価の仕組み、近年の発注者支援業務の単価の動向について解説しました!

本記事のポイントは次の通りです。

  • 工事費用は労務費・機械経費・材料費を基に積算される
  • 労務費のベースとなるのが、職人の単価を表す公共工事労務単価
  • 発注者支援業務の費用の主体は人件費
  • 発注者支援業務の単価を表したものが設計業務委託等技術者単価
  • ここ10年の間、発注者支援業務の単価は上昇し続けている

発注者支援業務では公共工事量の増加および人手不足により、単価(給与)が上昇傾向にあることがわかりました。

今後、発注者支援業務を目指す方の参考となれば幸いです。


 

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