国土交通省やNEXCOの昔とは?発注者支援業務エピソードを紹介!
この記事は以下の記事の続きです。
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発注者支援業務では、今と昔で大きく変わったことが多数あります。
同様に、国土交通省やNEXCOの体制も変化を遂げてきています。
今回は、過去の発注者支援業務にクローズアップし、「そうだったの!?」と思うこと間違いなしのエピソードを6つ紹介します。
- 現場へ行くとビール券が貰えた
- 検査が厳しすぎて業者からクレームがついた
- 昔はレベルが読めない人がいた
- 手心を加えていた人もいた
- 昔は1社が受注を独占していた
- NEXCOは”月給100万越え”がザラにいた
前回は『2. 検査が厳しすぎて業者からクレームがついた』まで紹介しましたので、本記事では『3. 昔はレベルが読めない人がいた』から解説します!
目次
エピソード3: 昔はレベルが読めない人がいた
レベルとは、高さや水平を測ったり、高低差を測る時に使う測量機械を指します。
基準となる陸墨を出すことをレベル出しといいます。
施工における基準点や線を墨で記していく作業を墨出しと言います。
陸墨とは、墨出しにおいて記される各階の水平の基準を示すための水平墨のことです。
腰墨(こしずみ)、水墨(みずずみ)とも呼ばれます。
現場で高さ確認をするときは、このレベルを覗く必要があります。
ところが、1つのポイントを確認するだけなら問題なくとも、切り返して逆側から見る際にレベルを見れないという現場技術員が昔はちらほらいました。
しかし、なぜ業務を行うのに十分な資格を持った人がレベルを読めないのでしょうか?
実は数十年前には、経歴偽装で資格を取得する人が相当数いたのです。
本来、1級の土木施工管理技士の受験資格は、専門卒を除き、長期の経験年数が必要となります。
そこで、本当は広告営業の仕事をしているのに、その経歴を道路工事と偽装して受験票を申請していたのですね。
今は受験をすること自体厳しくなっているのでこのようなことはありませんが、当時は経歴偽装で難なく受験票を手に入れられました。
また、学科試験は一生懸命勉強すればパスできますし、実地経験も工事の経験を作文で書くようなものなので、テンプレートをマスターしてしまえば問題ありません。
すなわち、受験資格さえ手に入れば、実際の実務経験がほぼなくても試験に合格できたということです。
当時は、このようなペーパーの資格取得者が発注者支援業務をやっていたというケースが多々ありました。
レベルができるはずもないのは当然のことです。
ゾッとする話ですが、実際の工事は施工業者がしっかりしていれば大きな問題はありません。
施工業者側も何も言わずとも、ペーパーの現場技術員がいれば薄々勘づいていたでしょう。
よって、レベルが読めないことが事故に直結した例は聞いたことがありません。
1級土木施工管理技士とは
土木施工管理技士とは、施工技師管理士国家資格の1つです。
発注者支援業務でおおむね必須とされる資格で、2級と1級に分かれています。
また、工事現場における主任技術者や監理技術者になるためにも必須の資格で、1級・2級ともにそれぞれ第1次検定(学科)・第2次検定(実地)と2度の試験が行われます。
1級土木施工管理技士を取得すると、経営事項審査制度の技術力評価において、2級土木施工管理技士よりも高い点数を獲得できるなど、施工技術の指導的技術者としてより高い評価が受けられます。
また、指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業、舗装工事業・造園工事業)に係る特定建設業者においては、営業所ごとに専任の技術者、建設工事の現場に監理技術者を配置する必要がありますが、当該技術者には1級土木施工管理技士の取得が必須とされています。
従来は、第1次検定と第2次検定の両方に合格しなければ施工管理技士の資格を取得できませんでした。
しかし令和3年度より、第1次検定に合格した時点で”1(2)級技士補”の称号を得られるようになり、1級技士補は一定業務に従事できるようになりました。
エピソード4: 手心を加えていた人もいた!?
これは本来あってはいけないことですが、施工業者側に手心を加えていた発注者支援業務の人もいました。
要するに、施工業者側がいけないことをしてしまった。
それに対し、現場技術員が目をつむる見返りとして、業者から金品を受け取るということです。
これはニュースになった事例もいくつかあります。
現場の確認は、役所の職員も行いますが、圧倒的に発注者支援業務が行うことの方が多いです。
業者側は「発注者支援業務の人にOKを貰えればいい」というイメージを持ちやすくなります。
すると、都合が悪いことは発注者支援業務に金を握らせて解決できると思われやすいのです。
今後、発注者支援業務に就こうという人は、このように利用されやすい立場にあることを肝に銘じておくべきでしょう。
贈収賄の刑罰について
みなし公務員である発注者支援業務は、公務員とほぼ同等のルールを遵守すべきとされており、贈収賄もその1つです。
贈収賄を犯した場合、刑法ではその種類によって7パターンの罰則が設けられています。
- 単純収賄罪
- 受託収賄罪
- 事前収賄罪
- 第三者供賄罪
- 加重収賄罪
- 事後収賄罪
- あっせん収賄罪
順に説明します。
1. 単純収賄罪
収賄罪の基本パターンです。
賄賂を要求したり受け取ったときの罪です。
5年以下の懲役に処されます。
2. 受託収賄罪
公務員が職務に関する要求・依頼を受けて、単純収賄を行った際の罪です。
つまり「賄賂を渡すので、このようなことをしてください」と依頼を受けて、賄賂を受け取ることです。
単純収賄罪より罪が重いとみなされ、7年以下の懲役に処されます。
3. 事前収賄罪
これから公務員になろうとする人が、将来担当する職務に関する要求・依頼を受け、賄賂を要求したり、受け取ったりしたときの罪です。
ただし合格試験に落ちるなど、公務員にならなかった場合は罪として成立しません。
5年以下の懲役に処されます。
4. 第三者供賄罪
公務員が職務に関する要求・依頼を受け、第三者を通じて賄賂を受け取ったり、要求したりした場合はこの罪に該当します。
5年以下の懲役に処されます。
5. 加重収賄罪
賄賂を受け取った上で、公務員の職務において不正な行為を行った際の罪です。
公務員による不正行為は社会的影響が甚大なため、収賄罪の中でも特に重い罪とされ、1年以上の有期懲役に処されます。
6. 事後収賄罪
過去に公務員だった人が、在職中、職務に関する要求・依頼を受けて不正行為を行い、賄賂を要求したり受け取ったりした場合の罪です。
5年以下の懲役に処されます。
7. あっせん収賄罪
公務員が職務に関する要求・依頼を受けて、他の公務員に不正行為をさせた場合の罪です。
5年以下の懲役に処されます。
また、このような規定は発注者支援業務にあたる個人だけでなく、所属元の会社自体にも適用されています。
エピソード5: 昔は1社が受注を独占していた!?
発注者支援業務を行うのは建設コンサルタントで、今では複数の企業が入札を経て案件を受注しています。
建設コンサルタントとは、社会資本(インフラ)にかかわる企画、調査、計画、設計など、実際に着工する前段階の業務を幅広く担う業務です。
社会資本の整備は原則税金で賄われるため、公平性・透明性を担保するために設計者と施工者を別事業者が担うこととされています。
この原則にもとづき、社会資本整備は、①発注者である国や地方自治体、②設計を行う建設コンサルタント、③施工を行う建設会社(ゼネコン)の三者が中心となって進められます。
発注者支援業務は建設コンサルタント事業に分類されていますが、上記の建設コンサルタントとは少々毛色が異なります。
通常の建設コンサルタントが、国と民の間に立って中立的な立場で提案を行うのに対し、発注者支援業務は発注者側および国や行政の立場で業務を行うからです。
よって、建設コンサルタントと一口に言っても、すべての企業が発注者支援業務を受注しているわけではありません。
しかし昔の建設省(現:国土交通省)から案件を受注していた建設コンサルタントは、各地方で1社のみでした。
たとえば関東で言うと”社団法人 関東建設弘済会”がありました。
これは国土交通省の外郭団体、いわゆる天下り団体のような組織で、建設省のOBでほぼほぼ構成されていました。
そしてこの社団法人 関東建設弘済会が、関東の発注者支援業務をほぼすべて受注していたのです。
よって、今のような競争入札方式ではなく、特定の業者を指定して契約を締結する特命随意契約が採用されていました。
当時の発注者支援業務の特徴としては、非常にファミリー的な雰囲気がありました。
たとえば、国土交通省には出張所という、現場監督するための出先機関があります。
その出張所には所長および係長がいて、発注者支援業務はその下で働きます。
また、発注者支援業務のリーダーは管理技術者ですが、関東建設弘済会の管理技術者は、元建設省の職員です。
すると、管理技術者が所長の昔の上司というケースもあります。
そのため、管理技術者が仕事の指示や打ち合わせのために出張所を訪れた際、所長と2人で昔話に花を咲かせているようなシーンはよくありました。
また、懇親会や研修なども全員で一体となって行っていました。
異動も、地域全域を対象エリアとして割り当てられていたので、そういう意味では発注者支援業務の中の線引きが一切なかったと言えます。
今の入札制度に見られる競争原理からすると、このような体制はあまり好ましいものではないでしょう。
しかし、当時の発注者支援業務における大きな一体感は、今でも古き良き時代として語られることがあります。
当時、小さな建設コンサルタントは存在しなかった?
当時は関東なら関東建設弘済会、東北なら東北建設協会という風に1社がすべての地域の発注者支援業務を独占して受注していました。
よって、建設コンサルタントという企業自体はありましたが、発注者支援業務を受注していた企業はほぼありませんでした。
一部、ダムなど特別な分野の発注者支援業務を受注していた企業はあったと思いますが、全体的には弘済会や協会と呼ばれるところが独占して行っていました。
建設弘済会について
建設弘済会は昭和30~40年頃、建設事業の円滑な推進に資し、国土開発の発展に寄与することを目的として全国各地で設立された社団法人です。
あらゆる発注者支援業務を始め、防災活動支援や環境活動・地域づくり活動支援などを行っていました。
しかし、各地方整備局における公共事業費の拡大や業務量の増大を踏まえ、平成18年頃から一定の業務をアウトソーシングする取り組みが開始されました。
すると総合評価落札方式の実施や市場化テストの実施により民間受注が促進され、各建設弘済会への発注額は年々減少し、結果的に建設弘済会は発注者支援業務からの完全撤退を余儀なくされました。
公共工事の入札の仕組み・種類
公共工事は税金を財源とするため、よりよい工事目的物をできるだけ安価で得ることを目標としなくてはなりません。
そのため公共工事を発注する際は、不特定多数の希望者から最適な建設業者を選出するために入札が行われます。
入札は主に3種類の方法があります。
①一般競争入札
入札情報を公告して参加者を募集し、競争によって契約者を選定する方法です。
“一般”と名が付いている通り、基本的に入札はすべてこの方法で行われます。
参加資格がある企業であれば、たとえ業務未経験であっても入札に参加できます。
海外の事業者も参加できるため、より安価でよりよい契約ができる点がメリットです。
②指名競争入札
発注者が参加者をあらかじめ指名し、指名された事業達で競争を行って入札する方法です。
参加者が限定されている時点でやや平等性にかけるので、あくまで例外的な場合のみ行われます。
しかし、一般競争入札と違って、参加者の募集期間が不要であるため、発注者にとっては時間短縮のメリットがあります。
参加者の方も、ライバルが少ないことや、発注者の目的がわかりやすいというメリットがあります。
③随意契約
競争入札の方法をとらず、任意で事業者を決定する方法です。
建設弘済会が存在していた時代はこの方式で契約が結ばれていました。
近年の随意契約では、複数の事業者を指定し、コンペなどの形で競争をしてもらう場合もあります。
しかし、随意契約は根本的に公平性や透明性に反した契約方法であるため、限られた条件下のもとでしか認められません。
たとえば、目的物が特注である場合や、災害などで緊急を要しており、入札を実施する時間的余裕がない場合などです。
エピソード6: NEXCOは月給100万越えがザラにいた!?
最後はNEXCOについてのエピソードです。
NEXCOでは、当時は発注者支援業務を委託業務としてフリーランスに依頼していました。
要は、正式な社員に渡すような社会保険をかけた給料ではなく、報酬ですね。
そこで、NEXCOは国土交通省より給料が高いという点はよく言われていましたし、月100万円を超える人も多数いました。
ただ、やはりNEXCOは積算と工事監督支援を兼務するのでハードですし、残業も22時~23時までかかるということは同時に聞いていたところです。
今も積算と現場を同時に見るというNEXCOの体制は変わっていないため、給与面を比較しても、国土交通省よりNEXCOの方がやや高い傾向にあります。
ただ、昔はより多くの報酬が支払われているイメージがNEXCOにはあったということですね。
まとめ
今回は”発注者支援業務の過去エピソード”をテーマに、国土交通省やNEXCOの形態、給与の変化についても紹介しました。
今回取り上げた6つのエピソードは次の通りです。
- 現場へ行くとビール券が貰えた
- 検査が厳しすぎて業者からクレームがついた
- 昔はレベルが読めない人がいた
- 手心を加えていた人もいた
- 昔は1社が受注を独占していた
- NEXCOは”月給100万越え”がザラにいた
今とは異なる部分も多くありますが、金品の授受にまつわる発注者支援業務の心構えなどは、今の発注者支援業務にも通ずるところです。
この記事を参考に、発注者支援業務への理解を深めて頂ければ幸いです。
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
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