国土交通省の発注者支援業務を行う会社は3パターン!パターン別に会社を解説
この記事は以下の記事の続きです。
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国土交通省の発注者支援業務を受注する会社は、主に3パターンに分かれます。
前回は、3種類に分かれた経緯として、発注者支援業務の歴史を解説しました。
平たく言うと、昔は弘済会・建設協会が発注者支援業務を独占受注していたのですが、制度が変更されたことで、下請けだった協力会社が入札に参加・受注できるようになったという流れでした。
そのいきさつを踏まえ、今回は発注者支援業務の会社を3パターンそれぞれ紹介します。
発注者支援業務の会社探しをする際にも参考となる内容ですので、ぜひご覧ください!
パターン1:協力会社系
1つ目は協力会社系です。
かつては弘済会・建設協会の下請けだった会社ですね。
そもそも下請けだった協力会社が元請けになったという経緯があるため、このパターンの企業が最も多いです。
国土交通省の発注者支援業務をやってる会社の大多数は、かつての協力会社という見方をしても良いでしょう。
協力会社が発注者支援業務の受注を大きく占める理由は、実務をできる人を抱えていたから、ということがあげられます。
たとえ発注者支援業務が受注できても、実務を行う人がいなければ仕事にならないため、必要人員を抱えている会社ほど強いのです。
パターン2:旧弘済会・建設協会系
2つ目が、旧弘済会・建設協会系のパターンです。
建設弘済会は昭和30~40年頃、建設事業の円滑な推進に資し、国土開発の発展に寄与することを目的として全国各地で設立された社団法人です。
国土交通省のOBが主となって運営していたため、世間一般では国土交通省の天下り団体とも呼ばれていました。
主な事業はあらゆる発注者支援業務を始め、防災活動支援や環境活動・地域づくり活動支援です。
弘済会・建設協会は次のように、各エリアごとに設けられていました。
- 関東…関東建設弘済会
- 東北…東北建設協会
- 北陸…北陸建設弘済会
そして、関東であれば関東建設弘済会という風に、各エリアの発注者支援業務を独占受注(随意契約)していたのです。
かつて民主党から叩かれたことで、弘済会・建設協会の独占受注形態は終焉を迎えました。
しかし仕事が減ったとは言え、組織内には国土交通省OBである職員や、プロパー(自社のスタッフのこと)として直接雇っていた実務部隊の人員が残っており、組織を解散するわけにはいきませんでした。
そこで、組織を民間系企業に変更し、存続する運びとなったのです。
たとえば社団法人関東建設弘済会であれば、現在は”一般社団法人関東地域づくり協会”となっています。
各地に設立されていた弘済会・建設協会は現在、次の通り組織名が変更されています。
- 社団法人東北建設協会 → 一般社団法人東北地域づくり協会
- 社団法人北陸建設弘済会 → 一般社団法人北陸地域づくり協会
- 社団法人中部建設協会 → 一般社団法人中部地域づくり協会
- 社団法人近畿建設協会 → 一般社団法人近畿建設協会
- 社団法人中国建設弘済会 → 一般社団法人中国建設弘済会
- 社団法人四国建設弘済会 → 一般社団法人四国クリエイト協会
- 社団法人九州建設弘済会 → 一般社団法人九州地域づくり協会
- 社団法人九州地方計画協会 → 一般社団法人九州地方計画協会
社団法人が一般社団法人に変わっているのは、社団法人にかかるルールが変更されたためです。
かつての社団法人は次の2つに分かれることとなりました。
- 公益社団法人…公性の強い法人
- 一般社団法人…民関係に近い法人
つまり、昔の弘済会・建設協会で民関系企業へと組織を変更し、存続している会社が2つ目のパターンとなります。
2008年の公益法人制度改革によって大幅な法改正が行われ、”社団法人”という名称の法人格は設立することができなくなりました。
社団法人に関する次のような問題が、その背景にあったとされています。
- 社団法人は行政との強い結びつきがあった
- コネがなければ設立が難しかった
- 天下り組織になるケースが多かった
- 民業の圧迫に繋がっていた
- 公益性における判断が主務官庁の裁量次第だった
- 不正支出問題が多かった
そこで、一般社団法人と公益社団法人の2つを新しく設け、従来の問題の改善に至りました。
一般社団法人は設立に主務官庁の許可を必要とせず、事業にも公益性を求められないため、誰もが設立しやすくなっています。
一方、公益社団法人はかつての社団法人に近い法人形態ですが、従来より公益性が重視されるようになり、設立も厳格化されました。
よって、公益社団法人の設立には、公益法人制度に精通したエキスパートの支援が必要と言われています。
パターン3:大手建設コンサルタント系
3つ目は大手建設コンサルタント系です。
発注者支援業務は、前述の経緯を経て、建設コンサルタント業という括りになりました。
要するに、「建設コンサルタントが行う仕事ですよ」ということです。
では、そもそも建設コンサルタントとは何でしょうか?
答えは、設計屋です。
したがって、本来は道路・橋の設計を本業とする建設コンサルタントが、発注者支援業務に新規参入としてきたというイメージでいいでしょう。
建設コンサルタントの参入理由には、当時の建設業界の不況が影響しています。
本業であまり稼げないところに、発注者支援業務という新たな市場が生まれ、かつ、大きな金額の案件も多かったため、参入に至ったという流れです。
特に大手の建設コンサルタントが多いと言われています。
3つのパターンを代表する組織
具体的に3つのパターンをイメージできるよう、それぞれの代表的な組織を紹介します。
1つ目の協力会社系で代表的な企業としては、株式会社ティーネットジャパンがあります。
もともと弘済会・建設協会の協力会社として入っていた会社ですが、今は元請けになり、大企業へと成長しました。
2つ目の旧弘済会・建設協会系では、前述の関東地域づくり協会(旧関東建設弘済会)があります。
3つ目の大手建設コンサルタント系では、株式会社建設技術研究所、パシフィックコンサルタンツ株式会社などがあります。
補足:弘済会・建設協会はなぜ技術者を雇わなかった?
弘済会・建設共済会は、実務を下請けの協力会社に回していました。
この点について「なぜ弘済会・建設協会は協力会社の社員を直接雇わなかったの?」と思った方もいるでしょう。
弘済会・建設協会は国土交通省のOBの会社です。
したがって、他の企業から正社員として人を雇うことは考えづらかったのでしょう。
また、当時は発注者支援業務の規模があまり大きくなかったことも要因の1つだと思います。
その後、公共工事への投資額は増額されていきましたが、公務員の採用人数は絞られていました。
よって、発注者側の人員不足により、発注者支援業務の市場がどんどん拡大されていったのです。
まとめ
今回は、発注者支援業務を行う会社を3パターンに分け、それぞれを詳しく紹介しました。
本記事のポイントは次の通りです。
- NEXCOは少し異なるが、国土交通省の発注者支援業務の受注会社は主に3パターン
- パターン1は弘済会・建設協会系の協力会社だった会社
- パターン2は、かつて発注者支援業務を独占受注していた弘済会・建設協会系の会社
- パターン3は、本業で設計を行いながら、発注者支援業務の市場にも参入してきた建設コンサルタント
今回紹介した3種類の会社にそれぞれどんな特徴があり、どんな人が働くのに向いているのか、そのような内容もまたの機会に解説したいと思います。
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