弘済会・建設協会ってどんな団体?発注者支援業務の歴史を解説
国土交通省の発注者支援業務の会社には、3つのパターンがあることをご存じでしょうか?
今回は、3つに分かれた経緯として、発注者支援業務のこれまでの歴史を解説します。
発注者支援業務に関わりのある方なら非常に興味深い内容ですので、ぜひご覧ください!
国土交通省の発注者支援業務の歴史
2006年くらいまでは国土交通省の発注者支援業務は、ある社団法人が独占受注していました。
それが、国土交通省の外郭団体である弘済会および協会です。
外郭団体とは、平たく言うと子会社・関連会社のことです。
弘済会・協会は次のように、各エリアごとに設けられていました。
- 関東…関東建設弘済会
- 東北…東北建設協会
- 北陸…北陸建設弘済会
たとえば関東の仕事であれば、関東建設弘済会が受注するという風に、各エリアの発注者支援業務を弘済会・建設協会が独占していたのです。
少し言葉を変えると、随意契約をしていたということになります。
地方公共団体が競争の方法によらず、任意に特定の物を選定して締結する契約方法です。
現在、随意契約は公平性や透明性に反した契約方法であるため、限られた条件下のもとでしか認められません。
たとえば目的物が特注である場合や、災害などで緊急を要しており、入札を実施する時間的余裕がない場合などです。
たとえば国土交通省の関東エリアには、一都六県+山梨・長野の一部エリアが含まれます。
当時、同エリア内で発注者支援業務が発生した場合は、工事監督や積算、資料作成など、職種に関わらず、すべて関東建設弘済会が受注していました。
弘済会・建設協会とはどんな団体なのか
弘済会・建設協会とは、平たく言うと、国土交通省のOBが主となって運営していた法人です。
昔、国土交通省で所長などの役職に就いていた人は、50歳を過ぎてくると退職し、その後弘済会・建設協会に転職する流れが普通でした。
よって、弘済会は世間一般では天下り団体とも言われていたのです。
ただし、国土交通省OBが工事監督業務や積算、視力作成などの業務をやっていたというわけではありません。
実務は協力会社から人員を借りて行わせていました。
発注者支援業務が変わった経緯
現在の発注者支援業務は、複数の建設コンサルタントが競争入札をして受注に至ります。
建設コンサルタントとは、社会資本(インフラ)にかかわる企画、調査、計画、設計など、実際に着工する前段階の業務を幅広く担う業者のことです。
社会資本の整備は原則税金で賄われるため、公平性・透明性を担保するために設計者と施工者を別事業者が担うこととされています。
この原則にもとづき、社会資本整備は次の三者が中心となって進められます。
- 発注者である国や地方自治体
- 設計を行う建設コンサルタント
- 施工を行う建設会社(ゼネコン)
発注者支援業務は建設コンサルタント事業に分類されていますが、上記の建設コンサルタントとは少々毛色が異なります。
通常の建設コンサルタントが、国と民の間に立って中立的な立場で提案を行うのに対し、発注者支援業務は発注者側および国や行政の立場で業務を行うからです。
よって、建設コンサルタントと一口に言っても、すべての企業が発注者支援業務を受注しているわけではありません。
では、弘済会・建設協会による独占受注から、どのようにして現在の受注形態に変わったのでしょうか?
そのきっかけには、当時の民主党政権の影響があります。
当時は民主党政権が影響力を持っていた時代で、事業仕分けによる天下りの是正を推進していました。
そこで弘済会・協会もターゲットとなり、「協力会社が国土交通省から直接受注すればいいじゃないか」と糾弾されるに至ったのです。
要するに、国土交通省(発注者)と協力会社(実務を行う者)の中間に属する弘済会の存在意義が問われたのですね。
そこで、協力会社も受注できるようになり、ひいては価格競争をできるようになったことから現在の受注形態となりました。
ちなみに、今でこそ発注者支援業務の会社はたくさんありますが、当時は弘済会の存在もあり、発注者支援業務を受注する会社はほぼありませんでした。
建設弘済会は昭和30~40年頃、建設事業の円滑な推進に資し、国土開発の発展に寄与することを目的として全国各地で設立された社団法人です。
あらゆる発注者支援業務を始め、防災活動支援や環境活動・地域づくり活動支援などを行っていました。
しかし、各地方整備局における公共事業費の拡大や業務量の増大を踏まえ、平成18年頃から一定の業務をアウトソーシングする取り組みがスタート。
総合評価落札方式の実施や市場化テストの実施により民間受注が促進され、各建設弘済会への発注額は年々減少し、結果的に建設弘済会は発注者支援業務からの完全撤退を余儀なくされました。
当時の発注者支援業務の契約形態
現在、発注者支援業務を受注した際は、建設コンサルタントと発注者が業務委託契約という形態で契約を結びます。
当時の国土交通省と弘済会・協会も同様でした。
しかし弘済会・協会と協力会社についてはと言うと、出向という契約形態でした。
出向とは、法的な解釈で言えば、出向元と出向先の両方に籍があるということになります。
つまり、協力会社の社員を借りていながら、弘済会・協会の社員として実務をさせていたということですね。
まとめ
今回は、発注者支援業務の会社が3パターンに分かれた経緯として、発注者支援業務の歴史を振り返りました。
ポイントは次の通りです。
- 2016年頃まで、全国の発注者支援業務は弘済会・協会が独占受注していた
- 弘済会・協会は国土交通省OBの天下り組織
- 実務を行っていたのは協力会社の社員だった
- 民主党の天下り是正によって弘済会・協会は淘汰され、現在の受注形態になった
次の記事では発注者支援業務の会社3パターンについて、具体的に解説します!
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