【工事監督業務】国以外の発注者機関ってどこ?特殊法人・地方公共団体・地方公社
この記事は以下の記事の続きです。
前の記事を読んでいない方は、こちらの記事もご覧ください。
発注者支援業務の”発注者”は大きく次の4つに分けられます。
- 国
- 特殊法人
- 地方公共団体
- 地方公社
どの発注者の仕事をするかによって、工事内容が大きく変わることを知っていますか?
前記事では”国”をメインに取り上げ、国土交通省、農林水産省、防衛省の勤務地や工事内容について解説しました。
今回は国以外の3つの発注者について、引き続き詳しく説明します!
目次
1. 特殊法人の主な工事内容
まずは特殊法人です。
特殊法人とは、株式会社ではあるものの、株主が国(財務大臣や国土交通大臣)になっている法人のことです。
主な法人としては、次の2種類があります。
- 高速道路関連
- 空港関連
それでは順に説明します。
特殊法人1. 高速道路株式会社
特殊法人の1つとしてあげられるのが、次のようなNEXCO関連の会社です。
- 西日本高速道路株式会社
- 中日本高速道路株式会社
- 東日本高速道路株式会社
- 本州四国連絡高速道路株式会社
- 首都高速道路株式会社
- 阪神高速道路株式会社
工事内容は”高速関連の工事”で、主に次のようなものがあります。
- 高速道路の建設
- 車線の増数
- スマートインターを含むインターの建設
■車線の増数の目的
近年行われた”車線を増やす工事と言えば、2018年に行われた新東名高速道路の4車線→6車線化工事です。
車線を増やした最大の目的は、渋滞を減らすこととされています。
車線が増えると、トラックから速く走りたい乗用車まで速度差のある車が分散され、移動効率がアップします。
さらに通行止めや迂回になった場合でも、渋滞の緩和が期待されます。
特殊法人2. 空港株式会社
株主が国(財務大臣や国土交通大臣)というタイプの法人では、次のように空港関連の会社も該当します。
- 成田国際空港株式会社
- 新関西国際空港株式会社
工事内容は”空港関連の工事”で、主に次のようなものがあります。
- 滑走路の整備・保守メンテナンス
- 施設の整備・保守メンテナンス
つまり、高速道路工事においても、空港関連の工事においても、発注者支援業務は存在するということです。
独立行政法人
特殊法人と近いところでは、”独立行政法人”があります。
こちらは特殊法人とは違い、株式会社などの形態は関係ありません。
“独立行政法人”という名の通り、独立した法人のことです。
具体的には次の2種類があげられます。
- 都市再生機構(UR)
- 鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄建機構)
都市再生機構は昔の”住宅公団”のことで、昔団地を作っていたところです。
鉄道建設運輸施設整備支援機構は昔の”鉄道公団”のことで、平たく言うと、新幹線を作ってきたところですね。
住宅公団や鉄道公団が存在していた高度経済成長期は、人口がどんどん増えていた時代ですから「住宅が足りない」「交通網が足りない」という問題がよく起こっていました。
つまり、以下の流れで各公団が工事を行っていたのですね。
「人々の住宅が足りない」→「団地を作りましょう」=住宅公団
「交通網が足りない」→「新幹線を作りましょう」=鉄建公団
それでは現在、都市再生機構と鉄道建設運輸施設整備支援機構がどのような工事を行っているのか解説します。
■都市再生機構の主な工事内容
都市再生機構はかつて団地を作る工事がメインでしたが、今は少し趣が変わっています。
URのホームページでは、事業内容を大きく3つとしています。
- 旧団地の整備・維持・修繕・補修
- 震災復興
- 都市の再整備・再開発
次から順に説明します。
旧団地の整備・維持・修繕・補修
これはつまり“元々作った団地の維持管理”ということです。
作った団地には維持のための修繕が必要ですし、建て替えの必要性も出てきます。
そういった住宅関連の工事がまず1つあります。
震災復興
たとえば東北の震災で津波があった際「高台に街ごと移転しよう」という話が出ました。
このような街移転について、いろいろ調整しながらアドバイジングしていくのがURの仕事です。
都市の再整備・再開発
品川駅の再開発などもこの業務に含まれます。
今後“リニア”が入ってきたりすると、当然、駅周辺の整備が必要です。
駅周辺の整備をするなら道路整備も必要ですし、品川区だけでなく、東京都との協議も必要になります。
「リニアだから管轄はJRでしょ」というわけにはいかないのですね。
こういった場でアドバイザーとして”まとめ役”をするのが今のURの大きな仕事と言えます。
■鉄道建設運輸施設整備機構の主な工事内容
鉄道建設運輸施設整備機構は”鉄道機構”とも呼ばれています。
工事内容としては、新幹線建設がメインになります。
近年は次の3種類の新幹線建設を支援する業務が大どころです。
- 北海道新幹線
- 北陸新幹線
- 九州新幹線
新幹線建設の工事は北海道新幹線を除き、ほとんどの場合、トンネルか橋になるかと思います。
品川駅の再開発について
品川駅では、2027年にリニア中央新幹線の品川〜名古屋間の開業が予定されています。
そもそもリニアとは、車両に搭載した超電動磁石と地上に取り付けられたコイルとの間に磁力を発生させることで浮上して走行するシステムです。
二酸化炭素排出量の削減が見込まれるため、環境保全の面からも良好な交通手段として注目を浴びています。
リニア中央新幹線とは、超電導リニアを導入し、さらに東京都から名古屋、大阪までを結ぶ新幹線のことです。
リニア中央新幹線が実現されれば東京~大阪間が約1時間で移動でき、東京・名古屋・大阪を1つの巨大都市圏とみなすことができます。
この構想をスーパー・メガリュージョン(SMR)と言います。
品川駅はリニア中央新幹線の東の始発駅となるため、東京都では2040年代を目標に、下記のような再開発を計画しています。
- リニア駅としての整備効果を波及させるため、品川駅の乗り換え拠点としての機能を強化
- 次世代モビリティなど、新たなまちづくりのショーケースを目指す
- 民間開発を誘導し、官民連携で実現
2. 地方公共団体の主な工事内容
次に地方公共団体です。
地方公共団体とは要するに地方自治体のことで、”都道府県”や”市町村”を指します。
では各自治体がどのような工事を行うのか説明します。
都道府県の主な工事内容
都道府県の主な工事内容は大きく分けて次の2つです。
- 県道の整備
- 二級河川の整備
1つ目の県道の整備は、たとえば”千葉県”の自治体なら、千葉県道の整備を行うことになります。
2つ目の二級河川の整備も都道府県の管轄です。
一級河川については前記事で説明した通り、国が整備・管理を行います。
■二級河川とは
まず一級河川とは、国土保全上または国民経済上で特に重要な水系のうち、国土交通大臣が指定した河川のことです。
二級水系とは、この一級水系以外の水系で、公共の利害に重要な関係があるとされる河川のことを指します。
一般的に一級河川ほど規模が大きくないとされています。
二級河川の指定を受けているのは次のような河川です。
<北海道地方>
羽幌川
遠別川
<東北地方>
津梅川
八幡川
<関東地方>
目黒川
汐留川
<中部地方>
信濃川
鮎沢川
<近畿地方>
宇川
春木川
<中国地方>
塩見川
倉敷川
<四国地方>
浦上川
奈半利川
<九州地方>
多々良川
古江川
市町村の主な工事内容
市町村の工事内容としてあげられるのは次の2つです。
- 市道の整備
- 公共下水道の整備
1つ目が市道の整備です。
国が管理するのは国道、都道府県が管理するのは県道ということで、市町村は市道を管理することになります。
松戸市道を作るとすれば、それは”松戸市”が工事発注をするということです。
2つ目が公共下水道の整備です。
公共下水道の整備は国でも都道府県でもなく、市町村が行います。
しかし公共下水道はこれまでにだいぶ整備されてきたので、工事件数としてはもう少ないかと思います。
3. 地方公社の主な工事内容
最後の発注者は地方公社です。
地方公社には主に次の3つがあります。
- 道路公社
- 土地開発公社
- 住宅供給公社
公社は”公の会社”と言うぐらいですから、公の性質が強いのが特徴です。
それでは順番に説明します。
1. 道路公社
道路公社とは平たく言うと、高速道路以外の”有料道路”を作る会社のことです。
県単位になることが多く、”千葉県道路公社”のように〇〇県道路公社といった名前の公社が多いです。
■高速道路以外の”有料道路”とは
有料道路の例をあげると、かつて”松戸野田有料道路”という道路がありました。
有料道路の仕組みは高速道路と同じなので、利用者は200円程度の通行料を払って通ることになります。
私も最初のうちは通行料を払って走っていたのですが、20~30年後には通行料が無料になりました。
これはどういうことかというと、有料道路には「道路を作る際の建設費を通行費として徴収して良い。
ただし回収できた時点で無料道路として開放すること」というルールがあるのです。
ちなみに普通の高速道路も本来はそういう考え方になっていました。
なぜこのようなルールになっているか理由を簡単に言うと”資金管理が楽になるから”という点があげられます。
たとえば市道を建設する際に10億円がかかる場合、当然ですが市には10億円の予算が必要となります。
この点で、予算管理が大変という問題が発生します。
しかし建設費を通行費で賄うという形にすれば、一時的にはどこかで建設費用を借りなければいけないものの、徴収した通行費をそのまま返済にあてられます。
もともと公共工事は税金を財源とするものですから、通行費(=民間の資金)を建設費にあてても何の問題もありません。
逆に言うなら、そのように民間の資金を使って道路建設をする制度の中でできたのが、道路公社ということです。
また道路工事を行うわけですから、もちろんそこに発注者支援業務も発生します。
2. 土地開発公社
土地開発公社の主な仕事は公共用地を取得することです。
つまり都道府県や市町村が「ここを道路にしたい」「ここを公園にしたい」と計画を立てたときに、そのための土地を先に買うのが土地開発公社です。
なぜ土地開発公社が先に買うのかと言うと、地方自治体が土地を買うには、議会の決済を採ったり、各種手続きをしたりと、さまざまなタイムラグが発生するからです。
そうすると、購入までの時間の中で土地の価格が上がってしまう可能性があります。
現に、バブルの時代はそういった事例がよくあったので、レスポンスよく公共用地を取得する必要性があるのですね。
また、工事をする上で障害となる物があったらあらかじめ取り除いたり、造成をしたりということも土地開発公社の仕事です。
近年は土地開発公社の数は少ないかと思いますが、今回参考にした国土交通省の資料には載っていたので解説しました。
■造成とは
造成とは土地を有効に活用するために、敷地内を整えることです。
造成の作業には主に次のようなものがあります。
伐採
工事物を建設する際に支障になるような樹木は撤去され、切った木は搬出しやすいように細断されます。
また木の幹の処理が終わった後は、根っこから抜く作業(伐根)も行います。
盛土(もりど)
地盤面が低い場合は、土を盛って高さを出します。
逆に勾配のような高い部分がある場合は切土(きりど)を行います。
擁壁(ようへき)
高低差のある土地に工事物を建てる場合は、斜面の土が崩れないように安定させる必要があります。
この際に建てられるコンクリート等の壁状の構造物を擁壁(ようへき)と言います。
地盤改良
地盤改良とは、地盤が軟弱な場合に土地が過重に耐えられるよう強度を補強することです。
地盤改良には主に3種類の方法があります。
① 表層改良工法
表層改良工法は、深さ2mほど軟弱な部分の地盤を掘り、セメント系固化材をその土に混ぜて、強固にする方法です。
② 柱状改良工法
柱状改良工法は、土とセメント系固有材を混ぜて柱状の補強体を作り、それを地盤に埋め込んで強固にする方法です。
地盤改良中でも最もポピュラーな方法とされています。
③ 小口径鋼管杭工法
鋼製の杭を何本も打ち込み、地盤を強固にする方法です。
3. 住宅供給公社
地方公社の3つ目が住宅供給公社ですね。
これも県単位が多いかと思います。
住宅供給公社の仕事を平たく言うと”県営住宅の建設”です。
つまり一定の所得層が住める住宅を作るということです。
当然、住宅関係の工事がメインになりますし、公社ということで発注者支援業務も発生します。
■県営住宅とは
県営住宅とは、公営住宅法にもとづき、住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として建設される住宅のことです。
民間の賃貸住宅と異なる点は主に次の6つです。
- 家賃は所得によって区分分けされています。よって、同じ間取りでも家賃が異なる場合があります。
- 収入制限が設けられており、一定以上の収入がある人は借りられません。
- 年に1度、収入の申告をしなければなりません。
- 家族構成に変動があった場合は届け出る必要があります。
- 家賃の一部が税金で補われているため、一般住宅より家賃が低くなっています。
- 県営住宅の設備・維持にも税金が活用されています。
まとめ
最後に、今回取り上げた特殊法人・地方公共団体・地方公社の内訳や工事内容を次の表にまとめます。
発注者 | 発注者の内訳 | 工事内容 |
特殊法人(独立行政法人) | 高速道路株式会社 |
|
空港株式会社 |
|
|
都市再生機構(UR) |
|
|
鉄道建設運輸施設整備支援機構 |
|
|
地方公共団体 | 都道府県 |
|
市区町村 |
|
|
地方公社 | 道路公社 |
|
土地開発公社 |
|
|
住宅供給公社 |
|
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
理解を深めたい方はこちらの動画もご覧ください。