工事監督業務に必要な施工管理経験は10年!その4つの理由とは?
発注者支援業務の中でも代表的な職種が工事監督業務で、主な仕事内容は、民間企業の施行のチェック・検査です。
工事監督業務に就くには、施工管理の実務経験が必要とされ、最低でも10年は経験しておくべきと言えます。
では、なぜ10年が最低ラインなのでしょうか?
その背景には大きく4つの理由があり、今回はそのうち2つを解説します!
目次
発注者支援業務の工事監督業務には土木施工管理技士1級が必要
発注者支援業務の工事監督業務は、ルール上であれば土木施工管理技士2級でも就業可とされています。
しかし、実態としては1級取得者が行うケースが多いため、土木施工管理技士1級の取得は必須と言えるでしょう。
土木施工管理技士とは、施工技師管理士国家資格の1つです。
発注者支援業務にとって最も身近で、比較的取りやすい資格と言われており、工事現場における主任技術者や監理技術者になるためにも必須の資格です。
1級・2級ともにそれぞれ第1次検定・第2次検定と2度の試験が行われます。
第1次検定に合格すると1・2級施工管理技士補、第2次検定に合格すると1・2級施工管理技士の称号が得られます。
たとえば、1級土木施工管理技士の受験制度では、大卒者で約4~5年、指定学科で約3年の実務経験が必要とされます。
3~5年の実務経験だけでは工事監督業務に就けないのかと聞かれれれば、そうではありません。
しかし、実務に就く場合はやはりトータルで10年程度の経験があった方が良いでしょう。
次からその理由を解説していきます。
土木施工管理技士1級の受験に必要な実務経験の年数
土木施工管理技を受験する際、必要な実務経験年数は、学歴や卒業学科によって異なります。
1級受験に必要な実務経験年数は次の通りです。
1級土木施工管理技士│第1次検定
区分 | 学歴・資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||
指定学科の卒業者 | 指定学科以外 | |||
1 |
|
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
|
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
|
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他 | 15年以上 | |||
2 |
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卒業後8年以上の実務経験
(指導監督的実務経験を含み、 |
– | |
3 | 専任の主任技術者の 実務経験が1年以上ある人 |
|
卒業後8年以上 | 卒業後9年6ヶ月以上 |
その他 | 13年以上 | |||
4 | 2級合格者 |
1級土木施工管理技士│第2次検定
※前項(4)の区分で第1次検定を受験・合格した場合、前項の(1)~(3)もしくは次のア、イいずれかに該当する
区分 | 学歴・資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||||||
指定学科の卒業者 | 指定学科以外 | |||||||
ア | 2級合格後3年以上の人 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験 および専任の監理技術者による指導を受けた 実務経験2年以上を含む3年以上 |
||||||
2級合格後5年以上の人 | 合格後5年以上 | |||||||
2級合格後5年未満の人 |
|
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | |||||
その他 | 14年以上 | |||||||
イ | 専任の主任技術者の実務経験が 1年以上ある人 |
2 級 合 格者 |
合格後3年以上の人 | 合格後1年以上の専任の 主任技術者実務経験を含む3年以上 |
||||
合 格 後 3 年 未 満 の人 |
|
– | 卒業後7年以上 | |||||
|
卒業後7年以上 | 卒業後8年6ヶ月以上 | ||||||
その他 | 12年以上 |
理由1. 施工側の代理人はハイレベルな人が多いから
1つ目の理由は、施工側の代理人はハイレベルな人が多いからです。
たとえばNEXCOの場合、数億~数十億規模の大きな工事が頻繁にあります。
すると、工事を受注するのも鹿島建設や大成建設といったスーパーゼネコンになり、その代理人の対応を発注者支援業務が担います。
ここがポイントなのですが、大手建設会社の代理人と言えば、MARCHを始め、早慶、東工、東大といった高学歴者、かつ10年~20年の経験者であることが通常です。
もし工事監督業務の人間が経験不足であれば、そのようなハイクラスの代理人と協議をするのは、レベルが違いすぎて困難となるでしょう。
では、10年の経験があれば渡り合えるのかというと、それも絶対とは言い切れません。
同じ10年でも、経験してきた工事の質や内容によって差が出てくるからです。
特にスーパーゼネコンに勤めている場合などは、会社自体が小さな工事を受注しないため、その点は大きく異なるでしょう。
ただ感覚として、10年の実務経験は必要最低ラインかと思います。
学歴やスキルのレベルが違ったとしても、ある程度の経験値があれば、やり取りがしやすくなるからです。
施行管理を経験する上で、大きな工事も経験すべき?
ここまでを見ると、「施工管理で大きな規模の現場を経験しておいた方が有利なのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、一概に大きな工事が良いとは言えない部分もあります。
特に国土交通省では、工事のぶつ切り発注を行うため、数千万規模の工事が圧倒的に多いです。
つまり大きな工事を多数経験していても、規模や内容が変われば、その都度わからないことは出てくるということです。
ぶつきり発注とは、1つの工事を分割して、それぞれ発注をかけることです。
たとえば、道路1~2kmが工事対象区間だとしましょう。
それを1つの工事として発注すると、数十億円規模の工事になり、スーパーゼネコンしか受注できなくなります。
しかしそれを20分割し、それぞれ発注をかければ、中小規模の建設会社も受注しやすくなります。
国土交通省では、中小企業者の受注確保を目的として、このような分割発注を多数行っているため、中小規模の工事も多いのです。
最も良いのは、さまざまな規模・内容の工事を、均等に経験することですが、受注規模は勤務先のランクで大体決まってしまいます。
そういう意味では、施工経験の内容や規模を加味し始めるとキリがありません。
しかし、約10年の実務経験は誰でも確保できる上、どんな工事をする上でも役立ちます。
したがって、今回は実務経験の年数の重要性をお話しているという次第です。
理由2. 経験年数が浅いと予算・工程を経験できないから
2つ目の理由は、施工管理の経験年数が浅いと予算・工程を経験できないからです。
施工管理の仕事は、管理項目がおおよそ次のように決まっています。
- 品質管理
- 出来形管理
- 安全管理
- 工程管理
- 予算管理
しかし、3~5年程度の経験年数では、工程・予算管理を経験しない場合が多くあります。
まず、予算管理はお金の分野であるため、経験の浅い若い人には任せない傾向があります。
次に、工程管理はネットワーク工程表を作成するなど、全体の工事のスケジュールを調整・管理するのですが、こちらも若手が積極的に取り組む部分ではありません。
よって、工程・予算はある程度の経験者に任せる傾向があり、3年~5年ぐらいの実務経験では工程・予算は未経験ということも多いのです。
ネットワーク工程表とは、工事を工期内に完成させるため、無駄のない作業ができるよう作成される工程表のことです。
ネットワーク工程表には、次のような特徴があります。
- 工事全体の流れが明確になる
- 作業順序が可視化されるため、情報伝達が容易になる
- 当初の計画に変更が起きても、速やかに対処できる
- 複雑な仕事でも、短時間に行程計画が立てられる
- 各工事に必要な日数が可視化される
- それぞれの工事の関連性が明確になる
ネットワーク工程表を作成するには、アクティビティーやイベント、クリティカルパスなどの専門用語や作成ルールを覚える必要があり、施工管理者には必須のスキルとされています。
工程・予算管理を未経験のまま、工事監督業務に就くと、やはりどこか抜けている感じが否めなくなります。
特にNEXCOでは、工事監督と積算を一緒に行うため、予算管理で工事予算の構成について知っておくと役立つことが多いでしょう。
また、民間の施工業者からすると、予算はある意味最も重要な項目です。
そういう意味では、やはり予算・工程の部分も事前に経験しておいた方が、本質的な管理業務ができると思います。
まとめ
今回は、工事監督業務に必要な施工管理経験がなぜ10年なのか、4つの理由のうち、2つを紹介しました。
ポイントは次の通りです。
- 3~5年の実務経験では、実務で間に合わない恐れがある
- 施工業者の代理人がハイレベルな場合、こちらが経験不足だと協議で渡り合えない
- 経験が浅いと、工程・予算管理を経験しないまま実務に就く可能性が高い
- 工事規模や内容は勤務先のレベルによるが、実務経験年数なら自力で確保できる
残り2つの理由は、次回解説します!
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