遠隔臨場スタート!国土交通省の発注者支援業務リモート化が止まらない
国土交通省は”遠隔臨場”を令和4年度より本格的に実施することを発表し、現在、建設現場ではリモート化が進められています。
遠隔臨場とは、遠動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)により撮影した映像と音声を利用し、各種確認行為を非接触リモートで行うことです。
つまり、確認・検査業務を行う発注者支援業務にとって、遠隔臨場は必ずや通る道となります。
そこで今回は、遠隔臨場の内容や対象工事、費用計上などの実施要領について解説します。
遠隔臨場が本格導入された背景
遠隔臨場の本格実施は、令和4年4月1日から既に始まっています。
しかしなぜここに来て、遠隔臨場が導入されたのでしょうか。
その背景について、国土交通省は次の通り公表しています。
「従来、直轄土木工事では、段階確認や立会、材料確認を監督職員が現場に出向き、発注者立会のもとに行っていました。
令和2年度からは、生産性向上や非接触・リモート化に向け、現地に出向かず、Web 通信を使用した「遠隔臨場」の試行を行ってきました」
「その結果、令和2年度には全国で760件、令和3年度には約1,800 件程度と普及が進み、現場への移動時間や、立会に伴う受注者の待ち時間の短縮等の効果が確認されました」
「この試行結果を踏まえ、令和4年度から本実施に移行することとし、今般、「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」及び「建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案)」を策定しました」
「今後は、遠隔臨場の取組の裾野を広げていくとともに、”中間技術検査等への適用”の可能性についても検討を進め、引き続き、監督・検査段階における業務効率化が進むよう努めてまいります」
よって、今後は検査もリモートで行う方向で検討していくということですね。
遠隔臨場での検査
検査は書類確認も含まれるため、「遠隔臨場でどうやってチェックするの?」と思う人もいるのではないでしょうか。
最終形態として推測されるのは、事務所にいる役所側と、現場事務所にいる業者をWebで繋ぎ、共通のモニターで現場と書類の検査作業を共に行うという形です。
しかし、そこまで一足飛びに導入されるとは考えづらいため、段階的に実施されていくと思われます。
遠隔臨場の本格実施に関する実施要領
では、遠隔臨場はどのような工事で、どのような手順を追って本格実施されるのでしょうか。
こちらも国土交通省の資料に沿って説明します。
対象工事
「令和4年4月1日以降発注、および4年4月1日時点で遠隔臨場の対象工種がある工事は原則、全ての工事に適用」
基本全部の工事ということですね。
ただし、通信環境が整わない現場や工種によって不十分、非効率になることが明確な場合はこの限りではないとも記されています。
たとえば河川や砂防の工事で、ネット環境が整っていない山奥などの場合は、当然遠隔臨場をしなくていいということです。
砂防とは、地すべりやがけ崩れなど、土砂災害対策を目的とした手段の1つです。
日本は国土面積の7割を山地が占める上、山に囲まれた谷地やその下流で開けた扇状地、火山周辺の台地を生活や産業活動場所としているため、このような場所を守るための”砂防”という技術が非常に発展しています。
世界でも”sabo”という言葉がそのまま通用するくらいです。
実施
①新規発注工事
「発注時において、遠隔臨場の実施を”特記仕様書”に記載することとする」
遠隔臨場をする工事の場合、その旨を特記仕様書に謳ってしまうということですね。
特記仕様書とは、工事物の品質を確保するために、工法や使用機材など、施工の技術面や細かい部分について記載した書類です。
工事の内容説明や注意事項など、標準的な項目を記載した”標準仕様書”とは異なり、特記仕様書には図面に記載できないような詳しい情報まで記載されます。
特記仕様書の主な内容は次の5つです。
- 工事の目的
- 工事の範囲
- 工事の工程
- 事前協議の概要
- その他工事に関する詳細など、重要度の高い情報
②既契約(特記に記載がない場合)の工事
「発注者が対象工事に合致すると判断した工事は、設計変更により発注者指定型として実施」
特記仕様書に「遠隔臨場の実施」と記載されていない発注済みの工事でも、発注者側が「リモートに向いている」と思うのであれば、設計変更を通じて遠隔臨場を実施するということです。
「発注者が対象工事に合致しないと判断した工事で、受注者から遠隔臨場の希望があった場合、受発注者間で協議し、特段の事情がない限り、発注者指定型として実施」
発注者側は特記仕様書で遠隔臨場の旨を記載していないものの、受注者(工事業者側)が「リモートでやりたい」と希望を出した場合は、協議をして決めてくださいということです。
そして、可能であればリモートで実施した方が好ましいということですね。
費用負担
「遠隔臨場実施にかかる費用の全額を技術管理費に積上げ計上」
“積上げ計上”とは何かを説明するために、まず経費の主な計算方法について説明します。
一般的に経費には、率計上と積上げ計上の2つの計算方法があります。
率計上は、工事費が1000万円、経費率が20%だとしたら、経費として200万円を計上する方法です。
この200万円の中には、釘などの消耗品や工具代などがすべて含まれます。
一方、積上げ計上とは、釘1本=100円、工事で100本使うなら1万円など、1つ1つの経費をきっちり拾い出して計上する方法です。
国土交通省は、遠隔臨場にかかる費用はこの積上げ計上をするように、と言っているのですね。
費用算出方法
「機器の手配は基本的にリースとし、その賃料を計上する」
リモートにかかる費用のイメージとしては、次のようなものがあります。
- 撮影機器、モニター機器の賃料
- 撮影機器の設置費(移設費)
- 通信費
- その他(ライセンス代、使用料、通信環境の整備などにかかる費用)
こうった費用を積み上げ計上し、その全額を発注者側が支払うということです。
発注者支援業務は遠隔臨場に慣れていこう
遠隔臨場が本格実施されれば、いちいち現場に行く必要がなくなり、移動時間の削減を通じて業務効率的に繋がります。
国土交通省がこのように遠隔臨場の原則実施を宣言した限り、発注者支援業務の人間も遠隔臨場に慣れる必要があります。
工事監督支援業務であれば、これからは現場に出向き、役所の人を対応するのではなく、リモートで行う時代だという感覚を持っておいた方がいいでしょう。
実際、自分の目で見るのとモニター越しで見るのは異なる部分が多く、「やりづらい」という声も上がっていますが、こればかりは時代の流れに沿っていくべきだと思います。
まとめ
今回は令和4年度からスタートした遠隔臨場の本格実施について、国土交通省の資料をもとにその実施概要を解説しました。
ポイントは次の通りです。
- 令和4年4月1日から建設現場での遠隔臨場が本格実施されている
- 現状、”確認”と”立会”のみの実施だが、今後は”検査”でも適用される見込み
- 遠隔臨場は一部を除いたすべての工事に原則適用
- 費用は発注者側がすべて負担する
- 発注者支援業務はリモート作業に慣れておくべき
遠隔臨場は業務効率化が期待される一方、従来と異なる業務形態が求められ、戸惑う人も多いかと思います。
しかし来たるリモートの波は避けられないため、発注者支援業務は意識を改めて遠隔臨場に取り組んでいきましょう。
次の記事では、遠隔臨場を実際に導入した現場の具体的な事例をご紹介します。
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