発注者支援業務ならデジタル化は必須!国交省が推進するDXの施策を解説!
近年、デジタル化はどの業界においても進んでおり、発注者支援業務も同様です。
今後、発注者支援業務に従事する方にとってデジタル化への対応は必須となるでしょう。
そこで今回は、国土交通省が推進している主だった取り組みを5つ紹介します。
- ASPを活用し書類は電子データで管理
- 各種打ち合わせは電子データによる開催とする
- 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施
- 休日・夜間作業の届出はASPの事前連絡を行う
- 工事検査は電子データにより実施
一体どんな風にデジタルやDXが取り入れられているのか、具体的に見ていきましょう。
目次
土木工事電子書類スリム化ガイドとは
土木工事電子スリム化ガイドとは、DXや働き方改革の推進に向け、現場技術員が徹底すべき取り組みを国土交通省がまとめたマニュアルのことです。
土木工事電子書類スリム化ガイドは、平成20年度に工事書類の簡素化を実現すべく策定された土木工事書類作成マニュアルが起源です。
平成28年度に実施された工事関係書類スリム化(簡素化)点検をもって、土木工事電子書類スリム化ガイドが策定されました。
その後、工事書類の簡素化においてもさらにブラッシュアップがなされ、インフラDXや働き方改革推進の観点も盛り込む形で、令和3年に土木工事電子書類スリム化ガイドの内容が改定されました。
受発注者双方の働き方改革を推進しながら、円滑な工事の施工を図るため、同ガイドの記載事項は関係業団体および受注者、監督職員、検査職員、現場技術員・施工体制調査員すべてが周知徹底するものとして位置づけられています。
同ガイドの冒頭には、次のように記されています。
工事書類は電子データが原則であることを明確にするため、名称を「土木工事電子書類」に改定。
つまり、かつて工事書類と呼ばれていたものを、土木工事電子書類に改定したということです。
国土交通省は、書類は電子化するのが原則だということを明言しているのですね。
工事関連書類の種類
工事を行うにあたっては、契約書や仕様書、工程書、通知書など膨大な種類の書類が作成・管理されています。
作成時期も工事着手前、施工中、工事完成時・完成後とさまざまです。
次に工事関係書類の一例を記載します。
<工事着手前>
- 工事請負契約書
- 共通仕様書
- 発注図面
- 現場説明書
- 工事数量総括表
- 現場代理人等通知書
- 請負代金内訳書
- 工事工程表
- 施工計画書
- 施工体制台帳
<施工中>
- 関係機関協議資料
- 材料確認書
- 段階確認書
- 確認・立会依頼書
- 休日・夜間作業届
- 工事履行報告書
- 請負工事既済部分検査請求書
- 出来高内訳書
- 建設機械使用実績報告書
- 建設機械借用書
<工事完成時>
- 完成通知書
- 引渡書
- 請求書(完成代金)
- 出来形管理図表
- 品質管理図表
- 品質証明書
- 工事写真
- 総合評価実施報告書
- イメージアップの実施状況
- 工事管理台帳
<工事完成後>
- 低入札価格調査 (間接工事費等諸経費動向調査票)
では、次から同ガイドに沿って、主だった取り組みを紹介していきます。
デジタル化への取り組み1: ASPを活用し書類は電子データで管理
そもそもASPとは、一般企業でも多く取り入れられているサイボウズのような情報共有システムのことです。
Application Service Providerの略称で、業務系アプリケーションソフト機能をインターネット経由で顧客や事業者へ提供するサービスのことを指します。
公共工事においては、工事の発注者である役所側と、工場を受注した施工会社側、そして発注者支援業務側がクラウドを通じて繋がっていることが多いです。
ASP活用について、土木工事電子書類スリム化ガイドでは、次のように記載されています。
- 「工事書類の処理の迅速化」を図り、建設現場の働き方改革、生産性向上に寄与。
- 全ての工事においてASP(情報共有システム)を活用し、全ての書類は電子データで管理。
つまり、工事関連書類はすべて電子化した上で、やり取りはメール等ではなく、ASPで完結させなさいということです。
たとえば紙が主流だった時代は、上司のもとへ書類を持って行き、決済を仰ぐという流れが通常でした。
しかしクラウドを活用すれば、瞬時に書類が上司のもとへ送付され、決済・承認もワンクリックで完了します。
よって、書類にかかる手続きの簡略化を図るため、基本はメール等のやりとりではなく、専門の情報システムを活用すべきとされています。
書類電子化のメリット・デメリット
たとえば見積書の決済・承認を上司から貰う際に、「条件はどうなってるの?」と質問された場合、対面であればすぐに口頭で伝えることができました。
ところが電子化した今は、見積書に不備があれば問答無用で却下されるか、コメント付きで差し戻されるかになります。
つまり、スムーズにやり取りができれば電子化における効率性というメリットは活かされますが、ある程度のスキルやリテラシーがなければ、逆に手間が増えてしまうというデメリットにもなり得るのです。
特に施工管理に従事する人は、対面でのコミュニケーションが得意な人が多い傾向にあるので、テキストで相手に意図を伝えることが難しく感じるかもしれません。
また、相手がスムーズに理解できる書類を作成するという点も今後、重要なポイントとなるでしょう。
デジタル化への取り組み2: 各種打ち合わせは電子データによる開催とする
公共工事では、工事の発注者である国土交通省側、受注者である工事会社側、そして両者の間に入る発注者支援業務側の3者で、設計審査会を始め、さまざまな打ち合わせを行います。
設計審査会とは、工事の発注者と受注者が次の過程を経て、設計変更や選考施工承認のための協議を行う場のことです。
- 工事工程クリティカルパスの共有、工事工程の照合
- 協議資料作成等の受発注間の役割分担
- 設計変更の妥当性審議(設計変更ガイドライン活用)
- 設計変更手続きに伴う工事中止の判断等
なお、もともと設計審査会は設計変更審査会という名称でしたが、土木工事電子書類スリム化ガイドの改定をもって、改称されました。
従来、打ち合わせは対面で行われ、資料も人数分を用意、配布されていました。
しかし現在はWeb会議を積極的に活用し、たとえ対面の打ち合わせであっても紙の資料を配布するのではなく、プロジェクター等を通じてデータ共有することが推奨されています。
この点においてのメリットは、参加者の移動時間がなくなること、人数分の資料を準備する手間、コストが軽減できることなどでしょう。
非接触の対応が推進されている昨今、民間業者においても、業者との打ち合わせはWebでの対応が主流です。
したがって、国土交通省も世の時流に乗るべく、Web会議や電子データの活用を求めているということですね。
まとめ
今回は、土木工事電子書類スリム化ガイドの内容に沿って、国土交通省が推奨するデジタル化への取り組みを紹介しました!
- ASPを活用し書類は電子データで管理
- 各種打ち合わせは電子データによる開催とする
- 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施
- 休日・夜間作業の届出はASPの事前連絡を行う
- 工事検査は電子データにより実施
本記事で触れた、国土交通省の推進項目は次の通りです。
- 工事関連書類は原則電子化
- 書類のやり取りはASP(情報共有サービス)によるやり取りで完結させること
- 会議・打ち合わせはWebで行う
- 配布資料はモニター・タブレットを活用して電子データを共有すること
今回は『2. 各種打ち合わせは電子データによる開催とする』まで解説しましたので、次記事では『3. 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施』から紹介します!
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