入札参加は1社のみ?発注者支援業務の入札で実は多い”一社応札”とは
発注者支援業務の受注会社が入札方式で決まるのは皆さんご存じの通りです。
その入札に会社が参加することを”応札”と言います。
今回は応札をテーマに、発注者支援業務にどのくらいの会社が応札しているのか、そして競争が起こらない”1社応札”のパターンについても見ていきたいと思います。
発注者支援業務の平均応札者数
まずは発注者支援業務の入札を実施した際に、どのぐらいの会社が応札しているのか平均数を見てみましょう。
工事監督や積算を行う発注者支援業務の平均応札者数は3.5社です。
これはつまり、1件の入札に対して3~4社が入札に参加し、競争をしているということになります。
一方、用地補償総合技術業務は1.8社。
公物管理補助業務は1.1社というデータでした。
こちらは入札に対し、1社しか参加していないということですね。
発注者支援業務は複数の業務に分かれていますが、工事監督業務が最も案件数が多いため、自ずと平均応札者数も多くなっています。
しかし道路許認可や河川巡視などを行う公物管理補助業務は、そもそも案件数・従事者数ともに数が少ないため応札者数も少ないのです。
発注者支援業務の職種別1社応札割合
“1社応札割合”とは、発注された1件の業務に対して、1社しか入札に参加しなかった場合の割合のことです。
たとえば国土交通省のとある事務所が10件の業務を発注したとしましょう。
これに対し、すべての入札に1社しか参加しなかった場合、1社応札割合は100%となります。
もし5件は1社のみが参加し、残りの5件は2社~3社など複数の会社が参加したということであれば、1社応札割合は50%です。
こちらの1社応札割合を発注者支援業務の職種ごとに見てみると、次のようになります。
10件業務があったら、そのうちの8件は1社しか入札していない状態です。
つまり「10件中8件は競争になっていない」と言えますね。
この流れで見ると、積算の人材よりも工事監督の人材の方が多いことがおわかりでしょうか。
いわば人が多いからこそ、複数の会社が入札に参加する=1社応札割合が低いということになります。
100件業務があったら、そのうち95件は1社しか入札に参加していないという状態です。
技術審査業務は入札の書類をチェックする少し特殊な業務のため、役所側としても誰にでもやらせたい仕事ではありません。
よって、数字にもその意図が表れているのだと思います。
河川巡視業務とは、公物管理業務に含まれる業務です。
こちらも1社参加の割合が高いですね。
許認可業務は道路許認可が圧倒的に多いのですが、こちらはその河川バージョンで、ジャンルとしては公物管理業務になります。
こちらはなんと1社応札割合100%です。
つまり発注されたすべての業務において、1社しか入札に参加しなかったということですね。
道路許認可も公物管理業務です。
公物管理とは完成した公物の維持・管理・監視をする仕事で、いわばレアな仕事です。
業務自体がそもそも多くない上に従事する人も少ないため、入札に参加する会社も少なくなっていると言えるでしょう。
ダム管理支援業務とは、完成したダムの監視・維持・管理を行う業務を指します。
堰・排水機場管理支援業務は、その名の通り堰や排水機場を管理する仕事です。
堰とは、川を堰き止めるための施設のことを言います。
また排水機場とは、災害時などに水位が高くなった支川の水を本川へとポンプアップする設備のことです。
詳しくは項の最後に設けた補足事項をご覧ください。
用地補償は業務の件数自体が少ないため、それが1社応札の割合にも影響しています。
堰・排水機場等管理支援業務はよく”機場管理”と呼ばれています。
業務内容は主に、堰や排水機場の監視、管理、点検、ゲート補助等です。
その他の業務内容としては以下のようなものがあります。
- 施設の監視
- 管理
- 点検
- ゲート操作補助
- 監視カメラ、ゲートの監視
- 水位データ確認
- 電気機械設備等の確認
- ゲートの操作補助
- その他の業務
業務内容としてはダム管理業務と似ていると言われ、台風や大雨等がなければ通常は忙しくない業務です。
1社応札割合から見えてくる発注者支援業務の傾向
ここまで発注者支援業務の職種ごとに1社応札割合を見てきました。
工事監督業務が36%であったのに対し、公物管理の”河川巡視”や”道路許認可”は80~90%と割合が高めでしたね。
なぜこのような差が出るのかといえば、これは人手不足が一因です。
発注者支援業務は現場監督を経て入ってくる人が多いのですが、昨今は現場監督も人手不足だと言われています。
よって発注者支援業務の人が減少傾向にあり、さらに河川巡視や道路許認可などレアな業務はより人が少なくなる=入札に参加する企業も減るということになるのです。
地域ブロック別の1社応札割合
国土交通省の地方整備局は、次の8つのエリアに分かれています。
- 東北
- 関東
- 北陸
- 中部
- 近畿
- 中国
- 四国
- 九州
今度はこの中から主な地方ブロックの1社応札割合を比較してみましょう。
まず工事監督や積算などの発注者支援業務は次の通りです。
- 関東…24%
- 中部…23%
- 近畿…22%
ここまでは軒並み20%台ですが、より地方へいくと次のようになってきます。
- 北海道…79%
- 東北…85%
- 四国…100%
地方に行けば行くほど1社応札割合が高くなっていますよね。
地方の方が人を集めるのがより大変だということが伺えます。
次に公物管理はどうでしょうか。
- 関東…90%
- 中部…96%
- 九州…92%
- 東北…100%
- 北陸…100%
- 中国…100%
- 四国…100%
最初の3ブロックまでは競争の余地がありましたが、残りの地域はなんとすべて100%。
地方で、かつ公物管理などのレアな業務になると、ほぼ1社の独占状態という風になっているようです。
1社応札の場合に起こること
さて1社のみが参加する入札と、複数社が競う入札ではどのような違いが発生するのでしょうか。
結論から言うと、落札価格に影響が生じてきます。
たとえば、ある業務の予定価格が1億円だったとしましょう。
そして、予定価格の8割である8,000万円が入札価格の下限だとします。
そこで3社が入札に来て戦った場合、皆8000万円で入札しようとしますよね。
低い金額で入札すればするほど、落札できる可能性は高くなるからです。
少なくとも予定価格が1億円の案件に1億円で入札することはまずありません。
ところが1社のみが入札に参加した場合は周囲と競う必要がないため、誰もが1億円で入札しようとします。
つまり競争相手が多いほど落札価格は下がり、一社応札の割合が高くなると落札価格は高くなるのです。
一般的な市場原理が入札においても働いていると言えます。
まとめ
今回は発注者支援業務の応札状況を紹介しながら1社応札割合について詳しく説明しました。
本来であれば入札はよりよい民間競争を促すために用いられるものです。
しかし発注者支援業務の職種や地域によってはある意味1社の独占状態になっていることがわかりましたね。
次の記事では”発注者支援業務の落札率の状況”について紹介しますので、そちらも併せてご覧ください。
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