発注者支援業務の会社選び!絶対失敗しないための注意点を6つ解説
発注者支援業務の転職先を探す際、どのように会社選びをすればいいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、発注者支援業務の会社を探す際の注意点をテーマに、次の6つのポイントを解説します。
- 企業の強み・弱みを知っておく
- 受注予定というキーワードには要注意
- 発注者の特性を事前にリサーチする
- 実務経験に繋がらない発注者支援業務に注意
- 市町村では、担当外業務を行う可能性が高いことを知っておく
- 積算と工事監督支援が分けられているか要チェック
入社後に「こんなはずじゃなかったのに…」とならないためにも、ぜひ参考にしてみてください
目次
会社選びの注意点1: 発注者支援業務における企業の強み・弱みを知っておく
大前提として知っておきたいのは、発注者支援業務を行う会社が、どんな業務でもやっているわけではないということです。
発注者支援業務と一口に言っても、工事監督支援や積算、許認可などさまざまな業務があるため、企業によってもどの業務が強いかという特性があります。
たとえば技術審査は特殊な業務のため、昔の国土交通省が管轄していた団体である旧弘済会・協会系が強いといったことがあります。
積算だと”持ち帰り”と言って、資料を役所から会社に持ち帰って、積算業務をする場合が多いため、セキュリティの厳しい会社でなければ請け負えません。
このような理由から、積算業務も得意な会社、そうでない会社が分かれるところでもあります。
加えて、発注者支援業務の仕事は社内にどんな人がいるかで受注できるか・できないかがおおよそ決まります。
なぜなら入札の評価基準で「道路の経験者がいる場合は加点」といったルールがあるからです。
よって、道路の技術者が多い会社は必然的に道路系の発注者支援業務に強くなりますし、河川の技術者が多ければ河川系に強くなります。
また、山間・山奥系の仕事は希望する人が少ないこともあり、地場の会社が強いといった風潮もあります。
逆に「〇〇のエリアで働きたい」「工事監督支援業務をしたい」「仕事のボリュームが多い国土交通省から仕事を請け負いたい」といった希望があるなら、事務所はある程度固まってくるので、該当の事務所に強い企業を探す必要があるかと思います。
単純に求人サイトでヒットしたところに決めてしまうと、希望の仕事が受注できなかったり、希望のエリアで働けずに単身赴任になったりという可能性もあります。
業務やエリアにおける企業の強みは、前もってリサーチしておきましょう。
技術審査業務とは
業務審査業務の仕事は、発注者が建設業者を決定する際に必要となる資料の確認・整理がメインになります。
主な仕事の流れは次の通りです。
①工事発注資料の作成
公共工事の発注を行うときには、まず工事概要をアナウンスするための公告をします。
その広告文書を作るのが仕事の1つです。
次に、入札の際に参加者にあらかじめ知っておいてもらいたい書類(入札説明書)を作ります。
こちらには発注者の名称や入札への参加資格、入札が行われる日時・場所、入札方法などが書かれています。
②参加者の確認・整理・分析
- 参加者に参加資格があるのか
- 工事担当予定の技術者は資格・実績を満たしているのか
- 工事実績はどの程度あるのか
といった項目を確認します。
③審査資料作成
提出された技術資料を分析・整理し、評価のための資料作成を行います。
入札の評価基準について
入札において現在最も代表的な評価方式が”総合評価方式”です。
総合評価方式とは、価格評価点と技術評価点を総合的に評価する方式を指します。
価格評価は、平たく言うと”いかに安く業務を請け負えるか”を評価することです。
かつての入札ではこの価格評価のみが重視されていた時期がありました。
しかし「金額だけで評価するのはダメだ」という風潮が起こり、技術評価が加えられることになったのです。
国土交通省における大まかな技術評価項目は次の通りです。
評価項目 | 評価の着目点 |
予定監理技術者の経験及び能力 | 資格要件・その専門分野の内容・専門技術力・業務遂行技術力・情報収集力・地域精通度 |
予定担当管理技術者の経験 | 予定担当技術者の専門技術力・業務遂行技術力 |
実施方針 | 業務理解度・実施体制 |
技術提案 | 本業務における留意点(的確性・実現性) |
会社選びの注意点2: 発注者支援業務の「受注予定」には要注意!
発注者支援業務の求人を見ていると「来春〇〇事務所を受注する予定なので、社員を募集します!」という内容がよくあります。
この「受注予定」というキーワードが出てきたら注意してください。
発注者支援業務は1~3月の間で入札・開札があり、そこで受注結果がわかって、4月から仕事スタートという流れになります。
よって、結果がわかるまでは受注は確約されず、予定はあくまで予定となります。
長年決まった仕事を一社が請け負っている場合もありますが、やはりその点を信じ込んで転職を決めてしまうのは危険です。
万が一受注できなかった場合、想定外のエリアへ単身赴任を余技なくされたり、希望とは違う業務をさせられたりというケースもよく耳にします。
もし、求人や面接で「受注予定」というキーワードが出てきたら注意しましょう。
発注者支援業務がスタートするまでの流れ
発注者支援業務はおおむね4月1日からのスタートが基本とされています。
これは役所の1年度が4月1日〜翌3月31日までだからです。
また、発注者支援業務が4月に開始するまでには大きく3つの段階があります。
- 公告
- 資料受付期間
- 入札・開札
順に説明します。
①公告
公告とは、おおまかに言うと仕事の案内のことです。
「4月から国土交通省の〇〇事務所で工事監督支援業務を発注するにあたって、入札を行います」という形で発表されます。
②資料受付期間
公告を受けて「この発注者支援業務をやりたい!」と思った会社が、必要な資料を提出する期間です。
内容には、担当者の資格や経験、会社としての実績、技術提案などが含まれます。
③入札・開札
入札してきた複数の業者を開札し、最も適していると思われる業者を選定します。
決定は3月末ギリギリに行われることもあります。
しかしこの最終決定が済むまでは企業にとって”受注確定”とは言えません。
よって、発注者支援業務にこれから就く方は”受注予定”という言葉には注意する必要があります。
会社選びの注意点3: 発注者支援業務の発注者についてリサーチしておく
意外と盲点なのが、発注者支援業務で仕事をする環境は役所(発注者)による、ということです。
そもそも発注者支援業務の会社に入ったからといって、そのオフィスで働くわけではありません。
オフィスに戻って業務を行うのは積算の”持ち帰り”くらいで、ごく稀なことです。
工事監督支援業務であれば、主に役所の事務所で業務を行うことになります。
よって、各役所の特性を知っておいた方が良いでしょう。
業務を行う場所が河川事務所なのか、道路事務所なのかでも特性は大きく異なります。
たとえば道路事務所に行って工事監督支援業務をするなら、当然夜勤が出てきます。
河川事務所に行く場合、”出水期”と呼ばれる工事ができない期間があるので「夏場は暇なんだろうな」と予想されます。
※出水期:融雪の時期、集中豪雨(梅雨)や台風の多い時期が出水期。日本では一般的に6月~10月頃
また、発注者が国土交通省なのか農林水産省なのかによっても、勤務環境は異なります。
農林水産省では用水路や圃場整備といった業務を行いますが、国土交通省の道路事務所であれば主に道路を作る業務なので、ここだけ取っても環境が異なるのは明白です。
その他、同じ道路に関わる業務であっても、発注者がNEXCOなのか、国土交通省なのかで業務内容が変わります。
NEXCOの場合、積算と工事監督支援の両方を請け負う必要がありますが、国土交通省では完全な分業となります。
こういった業務への取り組み方の違いは、働く上で重要なポイントです。
よって、発注者ごとの属性はある程度知っておいたほうが後のミスマッチが防げるかと思います。
農林水産省の仕事
農林水産省は、その名の通り、”農(業)・林(業)・水産(業)”を取り扱う省庁ですが、最も多い分野が農業です。
農道を作ったり、用水路を作ったりという業務が該当します。
圃場整備も農業にかかわる業務の1つで、要するに土地や区画がバラバラな田んぼや畑を整備することです。
畑の区画を広げたり、水路を整備したりといったことも含まれるので、農業における作業効率の最適化や生産性の向上が見込まれます。
圃場整備は個人の農地だけではなく、広い土地が対象になります。
よって、土地所有者や農業従事者の方などを含めた地域の方々と話し合い、どのエリアで整備を行うのかといったことを検討しながら調整していきます。
事務所によって異なるその他のポイント
前述した以外にも、国土交通省では事務所によって異なるポイントが2つあります。
- 事務所の繁忙期
- 事務所の職員の人柄
1つ目は、事務所によって忙しい時期とそうでない時期の差が激しいということです。
たとえば2019年の大きな台風や、2015年の鬼怒川決壊など、大きな災害が起こると復旧でかなり忙しくなります。
該当エリアの事務所で勤務していた場合、何年か忙しい状態が続いて残業三昧ということもありえます。
2つ目は、発注者側の職員の人柄によって、業務の大変さが変わってくるということです。
職員によっては非常に厳しいチェックをする人もいるので、そういうタイプの方のもとで仕事をすると、やはり辛い目に遭うことも出てきます。
以上2点の特性を事前に知ることは難しいかもしれませんが、発注者支援業務の転職活動において何か参考になればと思います。
会社選びの注意点4: 実務経験に繋がらない発注者支援業務に注意
発注者支援業務を通じて、ゆくゆくは1級土木施工管理技士の資格を取りたいと考えている人もいるかと思います。
そこで注意したいのが、発注者支援業務では1級の受験資格となる”土木施工に関する実務経験”にカウントされない仕事があるということです。
それが積算・許認可・河川巡視業務です。
たとえば2級の土木施工管理技士を持っていて、積算業務をやっている人がいたとしたら、そのまま同業務に従事し続けても、1級の受験資格は永遠に取れないということです。
もし会社自体が積算業務メインであれば、施工管理経験を積める部署すらないかもしれません。
そうなると、せっかく入った会社を一旦出たり、退社したりといった可能性もあります。
1級土木施工管理技士の資格取得を検討している人は、その点も考慮して会社を選びましょう。
会社によっては、資格取得に関する事情を考慮し、必要な人が施工管理の経験を積めるよう対策しているところもあります。
1級土木施工管理技について
土木施工管理技士は発注者支援業務でおおむね必須とされる資格で、2級と1級に分かれています。
1級土木施工管理技士を取得すると、経営事項制度の技術力評価において、2級土木施工管理技士よりも高い点数を獲得できるなど、施工技術の指導的技術者としてより高い評価が受けられます。
また、指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業、舗装工事業・造園工事業)に係る特定建設業者においては、営業所ごとに専任の技術者、建設工事の現場に監理技術者を配置する必要がありますが、当該技術者には1級土木施工管理技士の取得が必須とされています。
経営事項制度とは
経営事項審査とは、公共工事を請け負う際に企業が必ず受けなければならない審査です。
発注者は入札に参加する業者を選定する際、資格審査を行いますが、この際に審査項目として用いられるのが”客観的事項”と”発注者別評価”の2つです。
このうちの”客観的事項”にあたる審査が”経営事項審査”となります。
まとめ│発注者支援業務の会社選び
今回は、発注者支援業務の転職先を探す際の注意点をテーマに、4つのポイントを説明しました。
- 企業の強み・弱みを知っておく
- 受注予定というキーワードには要注意
- 発注者の特性を事前にリサーチする
- 実務経験に繋がらない発注者支援業務に注意
次回は、残り2つのポイント『5. 市町村では、担当外業務を行う可能性が高いことを知っておく』『6. 積算と工事監督支援が分けられているか要チェック』を徹底解説します!
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