国土交通省とネクスコの発注者支援業務の違い4選!【前編】
発注者支援業務の発注者として代表的な機関に、国土交通省とNEXCOがあります。
この2つの発注者には組織の形態や業務内容など、さまざまな違いがあり、具体的には次の4つです。
- 積算業務をするかどうか
- NEXCOは大型案件が多い
- NEXCOは株式会社
- 管理技術者が常駐するかしないか
今回は国土交通省とNEXCOの違いを紹介しつつ、発注者支援業務の仕事がどのように異なるのかを具体的に解説します。
国土交通省とNEXCO、どちらを目指すべきか悩んでいる方はぜひご覧ください
目次
国土交通省とNEXCOの違い1: 積算業務を行うかどうか
積算とは、要するに工事の予定金額を算出することです。
積算業務の担当者は積算はもちろん、特記仕様書も作るため、工事発注における主要部分を担っていると言えるでしょう。
この積算業務と工事監督支援を1人で両方担当するのがNEXCO、各担当が分かれているのが国土交通省です。
積算業務と工事監督支援を兼任するデメリット
単純に積算と工事監督支援を兼任するNEXCOが大変なのは一目瞭然ですよね。
また、両業務を兼任していると、バツの悪い思いをすることもあります。
工事の流れに沿って説明します。
- 道路を作る工事が決まる
- 積算で工事費用の見積もりを出す
- A社、B社、C社が入札をする
- 総合評価方式でいずれかの施工会社が選定され、工事を落札する
この後、施工の途中で積算にミスがあると判明した場合、NEXCOでは完全に自己責任なので、気まずい思いをします。
一方、国土交通省では各担当者が分かれているため、工事監督支援の人間が積算についてのミスを問われても、言い方は悪いですが他人事となります。
特記仕様書とは
特記仕様書とは、工事物の品質を確保するために、工法や使用機材など、施工の技術面や細かい部分について記載した書類です。
工事の内容説明や注意事項など、標準的な項目を記載した”標準仕様書”とは異なり、特記仕様書には図面に記載できないような詳しい情報まで記載されます。
特記仕様書の主な内容は次の5つです。
- 工事の目的
- 工事の範囲
- 工事の工程
- 事前協議の概要
- その他工事に関する詳細など、重要度の高い情報
予定価格とは
予定価格とは、契約を締結するにあたって人件費や材料費などのコストを考慮し、積算した上で設定する落札基準価格のことです。
この予定価格以下で、安い入札金額を提示することが、工事を落札するための1つのポイントになります。
総合評価方式とは
入札において、現在最も代表的な評価方式が”総合評価方式”です。
総合評価方式とは、価格評価点と技術評価点を総合的に評価する方式を指します。
価格評価は、平たく言うと”いかに安く業務を請け負えるか”を評価することです。
かつての入札ではこの価格評価のみが重視されていた時期がありました。
しかし「金額だけで評価するのはダメだ」という風潮が起こり、技術評価が加えられることになったのです。
国土交通省における大まかな技術評価項目は次の通りです。
評価項目 | 評価の着目点 |
予定監理技術者の経験及び能力 | 資格要件・その専門分野の内容・専門技術力・業務遂行技術力・情報収集力・地域精通度 |
予定担当管理技術者の経験 | 予定担当技術者の専門技術力。業務遂行技術力 |
実施方針 | 業務理解度・実施体制 |
技術提案 | 本業務における留意点(的確性・実現性) |
積算業務と工事監督支援を兼任するメリット
こう考えるとNEXCOの仕事は大変ですが、見方を変えればスキルが上がるのは間違いありません。
通常、工事監督支援業務を行う場合は、すでに特記仕様書も、図面も、積算も済んでいる状態で工事を見ることになります。
しかし、NEXCOの工事監督支援の場合は、積算業務からすべて自分で担当しているので、工事の熟知度が格段に高いです。
よって、NEXCOを先に経験しておくと、国土交通省の積算業務、工事監督支援のどちらでも対応できます。
実際にNEXCOで発注者支援業務を行っていた人が国土交通省に来ると「楽だな」と感じる人が多いようです。
発注者支援業務がお金に関する業務で得られること
国土交通省の発注者支援業務は、1級土木施工管理技士の資格を持っていれば要件を満たせるだけに、若くして入ってくる人も多いです。
すると、民間の施工管理においても実行予算など、お金にかかわる仕事を経験せず工事監督支援に入るケースが多々あります。
それでも資格要件上は問題ないのですが、やはりお金の内訳を知っている人の方が、工事監督支援をする上で、業者の気持ちや立場を考えられるものです。
この点からも「NEXCOの発注者支援業務を行うとスキルが上がる」と言われるのは、理にかなっているのですね。
実行予算とは
実行予算とは工事の受注後に、工事方法、費用、期間などを考慮し、工事にかかる予算をあらかじめ算出したものです。
実行予算を組んでおくと、費用をどの程度に抑えるべきかといった”目標原価”の設定や、”最終的にいくら得られるのか”といった利益管理ができるようになります。
実行予算にない想定外の出費が発生した場合は、利益が大きく減少してしまうこともあります。
国土交通省とNEXCOの違い2: NEXCOは大型案件が多い
NEXCOは高速道路を扱う発注者なので、大型案件が多いのが特徴です。
当然、工事内容も「この区間内にトンネルと橋を作って、ここは切り・盛り土を両方でやります」といった大がかりなものです。
それでは、大型案件が多いNEXCOでは、発注者支援業務に一体どんな影響があるのか2点解説します。
レベルの高い人達と仕事をすることになる
大型案件が多いと必然、誰もが名前を知っているようなスーパーゼネコンが入ってきます。
よって、現場を確認・検査するときは、そういった名だたる企業の現場所長や監理技術者と顔を合わせることになります。
一方、発注者支援業務側が若い人だったり、経験が浅かったりすると、先方に勉強させてもらうような形になるでしょう。
発注者支援業務は発注者側の人間なので、先方もきちんと立ててはくれますが、やはり仕事としては、発注者支援業務側もある程度のリテラシーを備えた状態で協議できることが望ましいです。
現場所長とは
現場所長とは、現場で施工管理をしている”現場監督”達のトップであり、その現場の責任者のことを指します。
あわせてよく使われる“現場代理人”は、建設業法上定められている用語で、実質は”現場所長”のことです。
つまり現場で”所長”と呼ばれている人であっても、書類上に自身の身分を記載するときは”現場代理人”になるということです。
現場所長および現場代理人は、“監理技術者”や”統括安全衛生責任者”と兼務する場合も多いです。
監理技術者とは
監理技術者とは、建築業法(以下記載)に基づき現場に配置される技術者を指します。
建設業法第26条第2項
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額が、第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者で、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
監理技術者の主な仕事は、施工計画の作成、品質管理、その他技術上の管理および作業者の指導監督です。
設計図通りに施工が行われているかチェックすると共に、図面では伝わらない細かな内容を現場に伝えるという役割も担っているため、監理技術者になるにはしかるべき資格を取得しなければなりません。
“管理技術者”と区別するため、”サラカン”と呼ばれますが、これは”監”に皿の字が付いていることによるものです。
業務期間が長くなる
トンネルや、橋、大規模な土工事など、大型案件を取り扱うNEXCOでは、工事が数年がかりということも多々あります。
よって、国土交通省と比較すると、NEXCOは発注者支援業務の業務期間が長く、役所の人との関係性がよりファミリー的になるのが特徴です。
国土交通省の場合は、1年や2年で発注者支援業務の会社が入れ替わることもあるので、それに比べると、やはり長期間にわたって関係を持つNEXCOの方が親密になるのは当然と言えます。
ただこのデメリットは、人間関係が悪いと一気に裏目に出てしまう点です。
「NEXCOだから」「大手のゼネコンだから」と言って、現場代理人が良い人とは限らず、クセの強い担当者に当たる可能性もあります。
すると、その人と長期間お付き合いをすることになるので、場合によってはしんどい思いをするかもしれません。
まとめ
今回は、国土交通省とNEXCOにおける発注者支援業務をテーマに、どのような違いがあるのかを解説しました。
まとめると、国土交通省とNEXCOにおける発注者支援業務には次の4つの違いがあります。
- 積算業務をするかどうか
- NEXCOは大型案件が多い
- NEXCOは株式会社
- 管理技術者が常駐するかしないか
今回は『1. 積算業務をするかどうか』と『2. NEXCOは大型案件が多い』について解説しましたので、次の記事では『3. NEXCOは株式会社』と『4. 管理技術者が常駐するかしないか』を解説します!
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