国土交通省とネクスコの発注者支援業務の違い4選!【後編】

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この記事は以下の記事の続きです。

前の記事を読んでいない方は、こちらの記事もご覧ください。

国土交通省とネクスコの発注者支援業務の違い4選!【前編】

2022.05.27

発注者支援業務の発注者として代表的な機関に国土交通省とNEXCOがあります。

この2つの発注者には組織の形態や業務内容など、さまざまな違いがあり、具体的には次の4つです。

  1. 積算業務をするかどうか
  2. NEXCOは大型案件が多い
  3. NEXCOは株式会社
  4. 管理技術者が常駐するかしないか

前記事では『1. 積算業務をするかどうか』『2. NEXCOは大型案件が多い 』まで解説しましたので、今回は『3. NEXCOは株式会社』から説明します。

国土交通省とNEXCOの違いを知りたい方、発注者支援業務をするにあたってどちらの発注者がいいか悩んでいる方はぜひご覧ください!

国土交通省とNEXCOの違い3: NEXCOは株式会社

国土交通省は旧建設省・旧運輸省が合併された機関で、今も昔も役所として存在しています。

かつての国土交通省では、受注者(施工会社)は言われるがままの存在で、次のような会話も日常茶飯事でした。

受注者(施工会社)「何か支障物が出てきたんですけど」

国土交通省「設計変更して、次の通りにやりなさい」

受注者(施工会社)「この低予算でこの設計変更内容ですか…?」

国土交通省「それでやりなさい」

受注者(施工会社)「わかりました…」

しかし請負契約を交わしている限り、本来ならば「甲乙の関係は平等」という原則が守られるべきです。

近年はそういったコンプライアンスへの意識が高まっている風潮もあり、国土交通省でも施工業者の立場がより尊重されるようになりました。

施工会社から”異議申し立て”が上がってきても、昔のように無下にすることはありません。

 

一方、NEXCOは数十年前までは道路公団でしたが、今は株式会社となっています。

そしてNEXCOも施工会社を尊重する姿勢はもちろんありますが、国土交通省ほど丁重に気づかう雰囲気はないかと思います。

このようなコンプライアンスに対する意識の差が、官庁と株式会社の違いに起因しているとはよく言われるところです。

発注者支援業務は、発注者と受注者の間で中立的な立場を取ることが原則ですが、やはり国土交通省の方が受注者側をより気づかう雰囲気を感じると思います。

この受注者に対する発注者の姿勢の違いは、私の主観もありますが、実際に社員や同業者からも聞く話ですね。

国土交通省の成り立ち

国土交通省は、2001年1月の中央省庁再編に伴い、運輸省、建設省、そして北海道の総合開発事務を行う北海道開発庁、総合的な国土行政に関わる国土庁の4省庁が統合して生まれた行政機関です。

本文に出てきた建設省と運輸省は、どちらも2001年まで存在していた旧省庁のことです。

建設省は国土開発や地方計画の河川・道路・上下水道などの公共事業、住宅・土地政策、都市計画、建設産業の指導・監督などに関する行政事務を担当していました。

一方、運輸省は水・陸・海・空にわたる交通・運輸に関わる行政から、外局である気象庁によって行われる気象業務や、海上保安庁によって行われる海上の安全および治安の維持に至るまで幅広く担当していました。

道路公団とは

道路公団とは、1956年~2005年まで日本の高速道路・有料道路の建設・監理を行っていた特殊法人のことです。

正式名称は日本道路公団です。

日本道路公団以外にも、同業務を行っていた特殊法人として首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団の3つがあります。

2005年10月にこの4公団の民営化が行われ、次のように生まれ変わりました。

  • 日本道路公団→東日本高速道路株式会社・中日本高速道路株式会社・西日本高速道路株式会社
  • 首都高速道路公団→首都高速道路株式会社
  • 阪神高速道路公団→阪神高速道路株式会社
  • 本州四国連絡橋公団→本州四国連絡高速道路株式会社

NEXCOとは、上記のうち東日本高速道路株式会社・中日本高速道路株式会社・西日本高速道路株式会社の3社の統合的名称です。

国土交通省とNEXCOの違い4: 管理技術者が常駐するかしないか

こちらのテーマは、管理技術者の人以外はあまり関係ないかもしれません。

管理技術者とは、発注者支援業務の最上位ポジションです。

建設現場でいう所長や現場代理人の立場になります。

一般的に、発注者支援業務には管理技術者が必要とされます。

たとえば発注者支援業務で5人のチームがあり、役所の中で働くとしたら、5人の中に必ず1人は仕事の指示を出す人(管理技術者)を置くことになります。

なぜなら、発注者支援業務として働くその5人に、発注者である国土交通省やNEXCOの職員が仕事の指示を出してはいけないからです。

法律上の指揮命令の問題から、発注者ができることは責任者(管理技術者)にある程度のことを伝えるのみとされています。

よって、発注者支援業務のメンバーに直接的な指示を出すために、責任者の(管理技術者)を必ず置くこととされているのですね。

NEXCOと国土交通省における管理技術者の勤務スタイルの違い

まずNEXCOの場合は、基本的に5人全員が一緒にNEXCOの中で仕事をするスタイルになります。

一方、国土交通省の場合は、1人の管理技術者が複数の事務所を兼務できるため、NEXCOのように1つの事務所に常駐しません。

たとえば、とある会社が道路・河川・砂防事務所、3件の事務所で発注者支援業務を受注したとします。

この場合、管理技術者は各事務所に1人ずつ配置されるのではなく、1人の管理技術者が3つの事務所を掛け持ちすることになります。

1つの事務所に常駐しても問題はないのですが、基本的には兼務するスタンスが多いですね。

NEXCOと国土交通省における管理技術者の役回りの違い

国土交通省とNEXCOでは管理技術者の勤務スタイルが異なることから、業務にも違いが出てきます。

NEXCOでは管理技術者が1つの事務所に常駐し、ときには他のメンバーと同様に実務も行います。

よってNEXCOの管理技術者は、よりプレイングマネージャー的な存在と言えるでしょう。

一方、国土交通省の管理技術者は事務所に常駐しない上、各事務所を訪問する頻度も週1回から2週間に1回が平均的です。

かつては、訪問が月に1回だけという時代もありました。

また、事務所を訪れても仕事の指示出し以外の実務をすることはほぼないため、各事務所の他メンバーともあまり接点がありません。

このような理由から、どうしても営業的な訪問になるのが国土交通省の管理技術者です。

NEXCOの管理技術者がプレイングマネージャーだとしたら、国土交通省の管理技術者は完全なマネージャーと言えます。

まとめると、NEXCOの管理技術者は、皆と一緒に仕事をするので、より現場感があります。

スタッフの取りまとめをすること以外は、仕事内容も他のスタッフとそんなに大差ないでしょう。

一方、国土交通省の管理技術者は各事務所を兼務して回り、仕事の指示出しが主な業務になります。

同じ管理技術者でも、国土交通省とNEXCOでは仕事自体がまったく変わるようなイメージでいいでしょう。

管理技術者を目指す方は、このように発注者によってスタンス・仕事が違うこともぜひ覚えておいてください。

管理技術者とは

管理技術者とは、端的に言えば現場で働く人たちのリーダーのことです。

発注者支援業務の管理技術者は次のような業務を行います。

  • 発注者側の職員との連絡調整や打ち合わせ、協議・報告
  • 業務全般に関わる技術的事項の把握
  • 業務全般における技術上・管理上の指導監督

このように、発注者の職員と直接やり取りをすることも管理技術者の仕事です。

ちなみに建設業界におけるカンリは2種類あり、”管理”は竹冠の”管”なので”タケカン”と呼ばれます。

もう1つは”監理”で、”監”に皿の字が付いていることから”サラカン”と呼ばれます。

“監理技術者”は、建築業法(以下記載)に基づき現場に配置される技術者のことです。

所長・現場代理人とは

所長とは、現場で施工管理をしている”現場監督”達のトップであり、その現場の責任者のことを指します。

“現場代理人”は建設業法上定められている用語で、実質は”現場所長”のことです。

つまり現場で”所長”と呼ばれている人であっても、書類上に自身の身分を記載するときは”現場代理人”になるということです。

現場所長および現場代理人は、“監理技術者”や”統括安全衛生責任者”と兼務する場合も多いです。

発注者支援業務における指揮命令について

発注者支援業務の担当技術者達は、管理技術者から指示を受けて仕事を行います。

なぜ発注者から直接指示を受けないのかと言うと、発注者支援業務は”業務委託”という請負制の仕事だからです。

請負契約とは、端的に言うと、納期までに成果物を納品することを目的とした契約のことです。

求められる成果物を納品することで報酬を受け取ることができます。

業務委託契約の特徴は、仕事の委託側と雇用関係を結ばないことです。

つまり発注者と発注者支援業務は、雇用主・労働者ではなく、あくまで委託側・受諾側という関係性になります。

よって、委託側(発注者)から直接指揮命令を受けることはなく、あくまで自身の会社の責任者の指揮命令を受けながら働くことになります。

道路・河川・砂防事務所とは

国土交通省には8種類の事務所があり、道路事務所、河川事務所、砂防事務所はそのうちの3つです。

特に道路と河川は、国土交通省の発注者支援業務が主に担当するツートップです。

【道路事務所】

道路事務所は、主に道路の新設・整備・管理などを行います。

道路事務所は基本的に”国道〇号線”によって事務所が分かれており、たとえば東京国道事務所であれば、国道1号・4号・6号・14号・15号・17号・20号・246号・254号・357号が所轄とされています。

国道は長いので、丸々1本を管理するわけではありませんが、大まかなイメージで言うと、国道事務所=国道ごとの管理で分けられているという認識で大丈夫です。

【河川事務所】

一級河川関係の工事の管理を行います。

一級河川とは、国土保全上または国民経済上で特に重要な水系のうち、国土交通大臣が指定した河川のことです。

河川事務所はだいたい川の近くにあることが特徴です。

たとえば利根川のように大きな河川では、上流河川事務所と下流河川事務所で分かれることもあり、管理も上流と河川で分けて行っています。

少し変わったところでは、京浜河川事務所が河川以外に、沖ノ鳥島(小笠原諸島の南にある岩だけの小さな無人島)も管轄しています。

【砂防事務所】

そもそも砂防とは、地すべりやがけ崩れなど、土砂災害対策を目的とした手段の1つです。

日本は国土面積の7割を山地が占める上、山に囲まれた谷地やその下流で開けた扇状地、火山周辺の台地を生活や産業活動場所としているため、このような場所を守るための”砂防”とう技術が非常に発展しています。

その砂防を建てるのが砂防事務所の仕事の1つです。

また通常、川の上流の方へ行くと、山間になって、支川や水系があります。

その山間部に砂防ダムや砂防堰堤を建設するのも、砂防事務所の仕事です。

砂防事務所はこのような仕事柄、山の奥の方にあることが多いです。

まとめ│発注者支援業務における国土交通省とNEXCOの違い

今回は2記事に渡り、NEXCOと国土交通省の発注者支援業務を徹底比較しました。

紹介した4つの違いは次の通りです。

  1. 積算業務をするかどうか
  2. NEXCOは大型案件が多い
  3. NEXCOは株式会社
  4. 管理技術者が常駐するかしないか

発注者支援業務の業務内容はもちろん、組織内の雰囲気や受注者との関係、勤務スタイルも大きく異なることがわかりましたね。

国土交通省とNEXCOのどちらが自分に合いそうか、この記事が参考になれば幸いです。


 

この記事の内容は以下の動画で解説しています。

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