希望条件は通る?発注者支援業務に転職する際知っておきたいこと4つ
発注者支援業務に転職する際、条件面や職種など、さまざまな希望があると思います。
しかし、内容によっては希望が通らない場合もあることを知っていますか?
今回は発注者支援業務の転職者がよく希望する条件を4つ取り上げ、実現可能なのかを検証していきます。
- 自宅から通勤時間が1時間圏内
- 月の残業が10時間~20時間以内
- 40~50代の2級土木施工管理技士で工事監督業務を希望
- 1級は持っているが10年以上のブランクがある、かつ工事監督業務がやりたい
これから発注者支援業務に就きたいと思っている人はぜひご覧ください!
よくある希望条件1: 自宅から通勤時間が1時間圏内
「通勤時間を1時間以内に抑えたい」という声はよくありますが、実際には難しいところです。
理由は主に次の3つです。
- 住んでいる場所から1時間圏内に役所の事務所があるとは限らないため
- 仮に事務所があったとしても、そこで発注者支援業務を発注しているとは限らないため
- 所属する会社が自分の希望エリアでまんべんなく毎年落札できる保証はないため
発注者指定業務の仕事は、会社が落札できるかどうかにかかっています。
つまり、通勤1時間圏内で働きたい人がこの先10年~20年働くとしたら、会社は希望エリアの発注者支援業務を10年~20年落札し続けなければなりません。
これは現実的に考えて難しいところです。
都市部に住んでいれば、事務所の数は多い傾向にあるため、希望圏内の仕事に就ける可能性は広がりますが、それもずっと続く保証はないのです。
希望職種や保有資格によってさらに絞られる
人によっては通勤時間以外に、職種に関する希望を持っている人もいるでしょう。
しかし、通勤時間を1時間以内と希望した上で、職種を資料作成業務や現場監督業務と限定してしまうと、さらに実現は厳しくなります。
これが2級土木施工管理技士の資格保有者ともなると、実質、現場の仕事に従事できないため、通勤時間はおろか職種の希望もほぼ通りません。
改善点としては、次のように選択の幅を広げることです。
- 通勤エリアを広げる
- 職種の希望を広げる
- 1級土木施工管理技士を取得し、従事できる職種の幅を広げる
発注者支援業務に関係のない通常の会社勤めであれば、事業所が固定されるので、通勤時間の希望は叶いやすいものです。
しかし、その感覚を持って発注者支援業務に転職することは難しいと覚えておいた方がいいでしょう。
土木施工管理技士とは、施工技師管理士国家資格の1つで、1級と2級に分かれています。
発注者支援業務を目指す上でおおよそ必須とされており、土木系資格の中で最もポピュラーで取りやすい資格とされています。
2級は一般建設業の土木工事で主任技術者として施工計画を作成し、工程管理・安全管理など、施工に必要な技術上の管理などを行います。
1級は特定建設業の土木工事において主任技術者、または監理技術者として施工計画を作成し、現場における工程管理・安全管理など工事施工に必要な技術上の管理などを行います。
工事現場における主任技術者や監理技術者になるためにも必須の資格で、1級・2級ともにそれぞれ第1次検定・第2次検定と2度の試験が行われます。
第1次検定合格時は〇級施工管理技士補になり、第2次検定に合格すると〇級施工管理技士となります。
発注者支援業務で通勤時間が苦にならない理由
発注者支援業務の場合、都市部に住んでいる人であっても、平均通勤時間は1時間半~2時間程度と考えられます。
そう聞くと「えっ」と思う方もいるかもしれませんね。
しかし発注者支援業務は民間の施工管理と比べると、始業時間が遅い傾向にあります。
国土交通省やNEXCOの一部の事務所では始業時間が9時または9時15分というところもあり、なおかつ10分前頃に到着すれば問題ありません。
すると、通勤時間が2時間だったとしても、家を出るのは7時15分頃です。
普通のサラリーマンとあまり変わりませんよね。
また、民間の施工管理では車通勤の人も多いのですが、発注者支援業務は電車通勤の人が多いです。
よって、通勤時間の2時間ずっと寝ていられるという点も、通勤時間が問題とならない理由の1つでしょう。
これが民間の現場監督となると、始業時間が早い上に朝礼があるため、現場には早めに到着しなければなりません。
また仕事中は現場を駆け回り、測量をし、出来高を測り、という作業が付き物です。
一方、発注者支援業務にはそのようなハードな作業がありません。
つまり裏を返せば、発注者支援業務だからこそ長時間の通勤時間でも苦にならないと言えます。
測量とは
測量とは、工事予定地の正確な位置(座標)・高さ・長さ・面積等をさまざまな専門器具を使って測定することです。
物を作るための施工プロセスに当たる業務のため、発注者支援業務では行いません。
測量業務は複雑な地形や厳しい環境下でも正確な作業が求められるため、非常に時間や労力を必要とされる仕事です。
土木系では特に「施工管理における6~7割の労務は、測量業務が占める」と言われています。
測量業務は屋外で行う外業と、事務所内で行う内業の2つに分かれます。
・外業
外業とは屋外で行う測量作業のことです。
5人程度のチームを組み、GPSや関数電卓、セオドライト(角度を測る器械)、レベル(高低差を測る器械)、光波測距儀(光を使って距離を測る器械)などの専門機器を使って測量を実施し、そこで得た結果を保存します。
・内業
内業とは測量士が事務所で行う作業のことを指します。
まず行うのは作業計画・測量計画などの立案です。
それから測量後は観測したデータをもとにさまざまな計算を行い、測量ソフトを利用して図面作成を行います。
完成した図面は製図機器を使って描画し、必要な書類が揃ったら発注者に提出します。
出来高とは
出来高とは、工事の目的物のすでに完成した部分(出来形)に相応する請負代金のことです。
工事の仕上がりに応じて代金が支払われることを出来高払い、もしくは中間払い、部分払いとも呼びます。
他の業界では、注文商品が納品されたときに初めて報酬が支払われます。
しかし建設業の場合は工期が長いため、同様の方法では何年も売上が入ってこないケースもあります。
また工事額は高額なため、まとめての支払いでは負担が大きく、支払いが遅れてしまう可能性もあります。
したがって、建設業界では支払いを複数回に分け、その都度の出来形に応じて支払われる方法が採用されているのです。
よくある希望条件2: 月の残業が10時間~20時間以内
発注者支援業務は土日休み、残業が少ないというイメージが持たれており、実際に残業が月間10時間未満という事務所も多くあります。
このことから「残業時間の少ないところで働きたい」という希望はよくあるのですが、職種によって難しい場合があります。
たとえば河川巡視業務や、許認可業務、ダム管理業務、機場管理業務のような職種は残業がほぼないというケースが多いです。
次の職種は、工事物が完成した後の管理を行う業務です。
- 河川巡視業務…堤防に異常がないか、不法投棄がないかなど、堤防沿いを車やバイクなどでパトロールする業務
- 許認可業務(河川)…河川に橋を架けたい場合や、河川敷をグラウンドなどに利用したい場合など、河川を占用する際に提出された申請を受付する業務
- 許認可業務(道路)…国道に歩道橋を建てたい場合や、地下に通信ケーブルなどを敷設したい場合など、国土を占用する際に提出された申請を受付する業務
- ダム管理業務…ダム周辺の監視、ダム制御機器の管理、放流ゲートの操作補助などを行う業務
- 機場管理業務…堰・排水機場における監視、機械設備等の管理・点検、ゲート操作補助などを行う業務
しかし、工事監督業務の場合は現場の仕事なので、年度や事務所の事情によって大きく左右されます。
したがって、残業時間をずっと20時間以内で抑えたいという希望を叶えることは難しいでしょう。
少なくとも発注者支援業務の発注ボリュームが多い国土交通省やNEXCOではまず不可能です。
一時的に条件が満たされる場合もあるかもしれませんが、ときに残業時間が30時間~40時間になる場合もあるということは、頭に入れておいた方がいいと思います。
それでも残業時間を重視する方には、前述の河川巡視業務や許認可業務などに職種を絞ることをおすすめします。
ただし、残業時間が少ないであろう職種は、その分給与が下がるという点も覚えておきましょう。
発注者支援業務で1番給与が高い職種は、1級土木施工管理技士を持ってして行う現場監督業務です。
発注者支援業務の職種を選ぶ際には、このように残業時間と給与のバランスも考慮した方がいいかと思います。
まとめ
今回は発注者支援業務の転職における注意点として、よくある希望条件を紹介しながら、実現可能なのかを解説しました。
- 自宅から通勤時間が1時間圏内
- 月の残業が10時間~20時間以内
- 40~50代の2級土木施工管理技士で工事監督業務を希望
- 1級は持っているが10年以上のブランクがある、かつ工事監督業務がやりたい
今回のポイントは次の通りです。
- 発注者支援業務において、通勤時間1時間以内を実現し続けるのは難しい
- 発注者支援業務は通勤時間が長くても苦にならない仕事
- 残業時間を少なくしたい場合、現場監督業務は難しい
- 管理業務は残業が少な目だが、給与もその分ダウンする
- 通常の会社員の感覚で発注者支援業務の転職に臨むとズレが生じやすい
今回は『2. 月の残業が10時間~20時間以内』まで紹介しましたので、次記事では『3. 40~50代の2級土木施工管理技士で工事監督業務を希望』から解説します!
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