遠隔臨場&完全ペーパーレス│近年の発注者支援業務のデジタル化とは
この記事は以下の記事の続きです。
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本記事では、発注者支援業務のデジタル化をテーマに、国土交通省が推進しているDXの取り組みを具体的に解説しています!
- ASPを活用し書類は電子データで管理
- 各種打ち合わせは電子データによる開催とする
- 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施
- 休日・夜間作業の届出はASPの事前連絡を行う
- 工事検査は電子データにより実施
前記事では『2. 各種打ち合わせは電子データによる開催とする』まで説明しましたので、今回は『3. 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施』から解説します!
目次
デジタル化への取り組み3: 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施
臨場とは、そもそも「その場所に臨むこと」という意味を持つ言葉ですが、工事現場の用語としては、施工現場へ赴くことを意味します。
また、現場における施工の段階や仕様通りの材料を使用しているかの確認、出来形(工事の目的物のすでに完成した部分のこと)の確認、立会い等を含みます。
従来の臨場は、役所の職員と施工会社の現場代理人(管理者・主任技術者)、発注者支援業務の職員が同行し、実際に現場で確認作業を行う流れが主流でした。
しかし現在は遠隔臨場が推奨されており、土木工事電子書類スリム化ガイドには次のように記載されています。
遠隔臨場の活用は移動時間の軽減や立会いの待ち時間の軽減となり、受注者にとっても発注者にとっても効率的な確認・立会いの実施であり、効果的である
遠隔臨場とは
では、遠隔臨場とは具体的にどのように行われるのでしょうか?
まず、現場代理人がゴーグル状になっているウェアラブルカメラを装着し、現場に臨場します。
発注側の職員は、事務所でモニターを使ってカメラの映像を確認し、さらに確認したいところがあれば代理人に指示を出します。
この方法であれば、全員がリアルタイムで現場を確認できる上、発注者側が現場へ移動する必要もありません。
また、急なトラブル時も迅速に対応できます。
したがって、国土交通省は遠隔臨場の有効活用を求めているのです。
遠隔臨場の問題点と展望
遠隔臨場は効率性という点では確かに優れた方法ですが、やはりカメラを通じての確認では限界があるという意見はよくあるところです。
そこには、まだまだ映像に目が慣れていないという点や、指示出しに慣れていないという課題が含まれるでしょう。
しかしながら今後人手不足が深刻化すれば、遠隔臨場の必要性はより高まるため、今から作業に慣れておく必要があります。
特に発注者側は現場移動だけで長時間を要することが多いため、遠隔操作を実現させることは大幅な業務効率化に繋がります。
発注者支援業務は現場の検査や状況確認をすることが主な業務です。
したがって1つの現場に長く滞在するのではなく、複数の現場を1~2時間程度で見てまわることが多いです。
また、国土交通省では1人当たり平均5~10件の工事を担当すると言われているため、現場から現場への移動だけで大きく時間を取られてしまうのです。
デジタル化への取り組み4: 休日・夜間作業の届出はASPの事前連絡を行う
従来、休日や夜間に作業をする際は、作業届の事前提出が必要とされていました。
しかしそのような申請も、届ではなくASPによる事前の連絡で良いという風に簡素化されました。
ただし、このルールは現道上以外の工事にのみ適用されるものです。
現道上の工事においても、作業届の提出は必要なくなりましたが、その代わりに次の4点が把握できる週間工程表等を提出することとされています。
- 作業日
- 作業時間
- 作業場所
- 作業内容
こちらは作業日ごとに提出する必要はなく、確定している作業日を集約しても良いとされています。
現道とは、現在主に使用されている道路のことを指します。
その他、道路には新道と旧道もあります。
新道は新しく作られた道のことで、旧道は新道がゆくゆく現道になった際、古くなった方の道路のことです。
旧道は廃道とされる場合もありますが、ときに生活道路として活用され続ける可能性もあります。
デジタル化への取り組み5: 工事検査は電子データにより実施
工事検査とは、工事が完成した際に行われる検査のことです。
従来通りの方法であれば、完成検査の際には書類の検査も行われます。
発注者と受注者側の職員が対面し、机の上に膨大な量の書類を並べて「まず施工計画書を見せてください」という風にチェックしていたのです。
完成検査においては、工事請負契約が適正に守られているかを確認するために、書面と現地での検査を実施します。
- 書面検査
工事発注時に明示した契約書や設計書、仕様書、施工計画書、品質管理表、出来形管理図、工事写真などの書類に基づいて、施工状況の検査を行います。
- 現場検査
受注者側の配置技術者と共に、現場にて工事の実施状況の検査を行います。
設計図面や出来形管理図などの書類に基づいて、工事目的物の出来形、品質、出来ばえなどを確認していきます。
また検査時には工事成績評定を同時に行います。
これは今後工事を発注する際の参考資料として活用される他、成績評定を受注者に通知することにより、受注者自身の技術的な指導に繋げるためです。
つまり検査の目的には、工事目的物の品質確保だけでなく、受注者の技術力向上および建設業界全体のレベルアップという側面があるのです。
この完成検査に関して、土木工事電子書類スリム化ガイドには次のように記載されています。
検査職員は電子データで検査を行い、別途紙の書類の提示を求めない
つまり書類確認も、モニターに映し出しながら確認作業を行うこととされているのです。
すでに紙の書類を作成されている場合であっても、検査の段階で提出を求められることはありません。
資料に不備があった場合、検査側はパソコン・タブレットなどで指摘事項を共有します。
また、次のような記載もあります。
- 不要な書類を作成しても工事成績評定では評価されない
- 書類の見栄えや多さは、工事成績評定に影響しない
- 工事概要説明資料(ダイジェスト版)の工事検査のために新たな資料の作成不要。
- 監督職員、検査職員は、不要な書類の提出、提示はもとめないこと。
したがって「念のために紙の資料もお持ちしました」と気を利かせても、見やすい資料を作ったとしても、特に評価はされないということです。
それはつまり、検査においてもペーパーレス化を徹底しようという方針が取られているからと言えるでしょう。
まとめ
今回は、土木工事電子書類スリム化ガイドの内容に沿って、国土交通省が推奨するデジタル化への取り組みを紹介しました!
- ASPを活用し書類は電子データで管理
- 各種打ち合わせは電子データによる開催とする
- 遠隔臨場を活用して効率的な施工管理を実施
- 休日・夜間作業の届出はASPの事前連絡を行う
- 工事検査は電子データにより実施
本記事で触れた、国土交通省の推進項目は次の通りです。
- 臨場はウェアラブルカメラの映像を通じて、遠隔で行う
- 休日・夜間作業の届出は簡素化されており、現道の工事以外はASPの事前連絡で完結する
- 工事検査では原則、紙の資料を用いない
- また、紙の書類を作成しても特に評価はされない
デジタル化に関する取り組みは現状、国土交通省が率先して行っており、県・市町村に関してはまだそこまで進んでいません。
しかし今後の人手不足問題を踏まえれば、デジタル化の波が追いつくのも時間の問題です。
ぜひ、この記事を参考にしながらデバイスの扱いに慣れておくなど、デジタル化に向けた準備をしておきましょう!
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
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